若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
10-210-2
夢を持つこと
~後編~
工藤 啓(くどう・けい)
公開:
更新:
若いときには、大人から「夢を持て」と言われますが、ある時から、「いつまでも夢ばかり見てないで、もっとしっかりしろ」と言われるようにもなります。やはり、夢は非現実的なものとしてとらえられているのかもしれません。
しかし、それでも夢や希望を持って生きている若者は輝いています。なぜ、彼ら/彼女らが輝いていられるのかと言えば、ほとんどの場合、周囲にいい大人や仲間がいるからでしょう。目の前の若者が語る夢を真剣に聞き、具体的なアドバイスをしたり、知人を紹介してくれたり。仮にその夢が現実的に難しいようであれば、無下にダメ出しをするのではなく、夢の方向性を若干修正したり、夢の形を微妙に変えたり、若者の夢の原型を尊重しつつも、夢の実現をサポートしてくれます。
私は、ここで「若者が夢を持てないのは、そういう大人がいないせいだ」と言うつもりはありません。むしろ、夢を持つ若者の側に、その夢をできるだけ多くの友人や大人に語ってほしいと思っています。夢を語ることはちょっと恥ずかしいことかもしれません。
しかし、何らかの形で伝えていかなければ、誰かの手助けや、有益な情報は得られないのです。もしかしたら、100人に伝えたら、99人が「夢ばかり見てるな」と言うかもしれません。唯一、その夢に共感してくれた一人が、ものすごい人物であったり、親身に相談に乗ってくれるひとかもしれません。実は、同じ夢を持っているひとかもしれません。こればかりは、語ってみなければわからないことです。
夢を語るには、お金もかからなければ、警察に捕まることもありません。つまり、何もリスクを背負う必要がないのです。お金がなければコンビニで買い物をすることはできませんが、夢を語ることで、仲間や応援してくれるひとを見つけることは可能です。夢をひとに話すことは恥ずかしいかもしれません。「そんなの不可能だよ」と切り捨てられてしまうかもしれません。でも、勇気と情熱を持って話をし続ければ、徐々に夢に近づくことはできます。恥や外聞にこだわらず、自分の夢を語る若者は、いつの時代も輝いているものなのではないでしょうか。そんな若者ならば一肌脱ごうじゃないか、という大人もまた、いつの時代にもいるものです。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか