
若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
226226
ブラックボックスの若者支援を
地域に開く「文化祭」レポート
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
公開:
先日、育て上げネットの本部(東京・立川)で市民の方々に向けた文化祭を開きました。一般市民の方に向けたもので、若者たちが協力してコーヒーやスイーツをふるまったり、普段から支援コンテンツとしても使用しているテレビゲームを使ったゲーム大会も開催しました。仕事体験の一環として独自に調達した書籍の配布イベントなども行っています。
普段から育て上げネットを利用している若者たちも合わせ、100名ほどが会場に来所してくださいました。立川市民が約18万人ほどですから、1日で立川市民の0.05%の方とのつながることができたと思うと十分な成果だと思います。
こうした企画をやるようになったきっかけは「立川に拠点を置きながら、市民の方からの認知が低すぎるのでは」と考えるようになったことにあります。
若者を円滑に支えていくためには、いろいろな「地域資源」とのつながりが不可欠です。さまざまな仕事体験の機会を作るのも私たちだけではできません。活動自体は準備できても、誰かに感謝される体験や社会の役に立った感触を得るには、直接の支援者ではない立場の方々とのかかわりが重要なのです。
これまでもさまざまな形で地域のみなさんの力を借りてきましたが、それでもかかわることができるケースは限られていて、特に若者支援の近い領域にいる人たちに限定されてしまいます。もちろんコアな関係者とのつながりは重要なのですが、同じくらいその輪を広げていくことも大切な取り組みなのです。
もうひとつ、私たちは若者支援をもっと開けたものにしていくことも大切にしています。一人ひとりの若者が抱えている悩みや苦しさをオープンにするということではありません。そうしたことはいままで通り「守られた場」で考えていきますが、過度に閉鎖的になってしまうと、若者を外的リソースにつなぐことすらリスクと捉えてしまいかねません。
若者人口の減少は歯止めがきかないまま進んでいます。普段から支援の場をオープンにする機会を作れば「希少化する若者がここにいる」のだと知ってもらえます。地域の中で文化祭を続けていくことで、育て上げネットを通じた若者と社会のつながりが生まれていってくれたらうれしいです。
若者支援は法整備が進んで20年ほどたちますが、今もなおほとんどの人たちにとってはブラックボックスのようなもの。普段私たちの活動する場へ広くみなさんに来てもらうことで、この状況を変えていきたいと考えています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)