そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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1年の振り返りと
来年の若者支援トレンドを考える

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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年の瀬が近づいてくると、自然とこの一年を振り返ります。今年は何が一番印象に残っているだろう——。そう考えると、やはりインタビューやヒアリング調査が途切れなく続いていたことです。

春先は「就職氷河期世代」が話題の中心でした。石破前総理が私たちの支援機関を訪れた際、このテーマに触れられたことや、選挙の争点になったこともあり、関連する話をする機会が増えました。その後は、子ども家庭庁をはじめ、さまざまな行政の担当部署から「孤立を感じている若者の話を知りたい」「支援者の声を聞きたい」という依頼が続きました。

国内だけでなく、海外からの取材も例年にないほど多かったのです。韓国はもちろん、北欧やヨーロッパ圏からも「日本の孤独・孤立問題への支援について教えてほしい」という声が届きました。

つい最近もイタリアからライターが訪れ、インタビューをしていきました。AIからの出力の影響などで私たちに取材が集中しているのか、あるいはこれだけ円安なのだから日本旅行を兼ねているのか⋯そんなことを考えながら対応していました。

こうした調査は、将来の若者支援にかかる予算や新しい助成金を生み出すための種まきです。行政予算は夏ごろには概算がまとまるため、反映されるのは翌々年度以降。待ち遠しいですが、若者たちが誠心誠意、自分の言葉で伝えた気持ちが形になることを願っています。

さて、他に今年は何があっただろう⋯と考えると、やはりAIの進化でしょう。私自身、改めて付き合い方を考えなければと思わされました。これは私だけでなく、社会全体の課題です。

もう一つ、来年に向けて感じているのは、若者支援のトレンドが「対面」に回帰しつつあることです。もちろん、オンライン型の支援がなくなるわけではありません。コロナ禍を経てオンライン支援は一般化し、スマホだから相談できた若者のケースも多くあります。一方で、対面だからこそできることもあります。

就職を目指すなら、顔を合わせなければ成立しない場面はまだまだ多いですし、お祭りの手伝いだって、画面越しではできません。こう書いているうちに「対面でないとできないこと」が今でもこんなにも多いから、困っている若者がこんなにいるのではと思ってしまいます。

少子化と人材不足が進む社会で、若者という存在はますます貴重になります。その中で「対面で生まれるつながり」が、今後の若者支援のキーワードになっていくのではないでしょうか。

このエッセイは2006年に始まり、来年で20年目を迎えます。これもまたひとつのつながりですが、長く続けることの難しさを感じながらも、できる限り続けていきたいと思います。2025年も本エッセイを読んでくださり、ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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