そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

96-2

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変えようとする勇気
~やってみる~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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前からちょっとだけ気になっていた事務所の入り口近くにあったシュレッダー。普通の業務用シュレッダーなのですが、ゴミ袋を入れ替える際に小さな紙片がどうしても散乱してしまいます。毎朝、掃除機できれいにしますが、日中にこぼれ落ちてしまったものがそのままになってしまうこともありました。

先日、朝一番で出社したとき、紙片が少し落ちていました。掃除機をかけていると次の職員が来て、「シュレッダーってここにないといけないのかな」という話になり、あそこはどうだろうか、ここを動かしてみたらいけるのではないかと、あーだこーだ言いながらも思いついたことをやってみました。

すると次の職員は、他にも気になっていたところがあり、そこにあった物品を動かし始め、また次の職員も自分の机の周りに“なんとなく”いつもあったものを移動させたいと話しました。シュレッダーを動かし始めてみたところ、次から次へと移動や破棄したいなと考えていた職員がそれぞれアイディアを実行し始めました。

30分くらいしてひと段落すると、ちょっとした空間が生まれたり、仕事がやりやすい環境ができたりしていました。私はシュレッダーの位置を変えてみただけですが、気が付くと事務所が変わっており、後から来た職員は「大きくレイアウトを変えたんですか?」と聞くほどです。

シュレッダーの紙片ゴミは、なんとなくみんな気になっており、そこに手を付けてみたところ、日ごろから気になっていたところを片付けたり、動かしたりしてみる空気が生まれ、結果として事務所が(一部ですが)変わりました。

レイアウトを大きく変更しようと思ったわけでもなく、環境整備を大々的に行おうとしたわけでもありません。ただ、ちょっと気になっていたことをやってみたところ、その輪が広がり、結果として大きな変化が生まれたということです。意図的かそうでないかは別にして、何かを大きく変えるべきだと考えたとき、自分ができることをまず“やってみる”ことで、新たな展開につながっていくこともあるのではないでしょうか。もちろん、大きな構想を持って物事を動かしていくことも大切ですが、自分ができることからやっていくことで生まれる変化もあるはずです。

そんなとき、いろいろ話をしながら進めていくだけでなく、ちょっとやってみる、動いてみることも同じように大切にしていきたいものです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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