若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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「働く」を考える
~雇われる以外の「働く」~
工藤 啓(くどう・けい)
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人生が随分と長くなると、いままでのように65歳くらいで「働く」から離れて、あとは年金や貯金で生きていく、というのも難しくなりそうです。国に人生後期を豊かに過ごせるようにしてもらうこともいいですが、誰かに自分の人生を全部預けて生きていくのはもったいないことです。
これまでは就職した会社で40年なり50年働いて、65歳で定年退職する。これが“よくある人生”のひとつだったかもしれません。しかし、いまはどうでしょうか。そもそもひとつの会社が何十年も続くことはなく、転職することも当たり前になりました。自分がいいなと思う業界や働き方を自分で選んでいくひとが増えたのかもしれません。
私は若いひとの「働く」と「働き続ける」を応援する活動をしていますが、最近よく考えていることがあります。確かに、働きたいと相談に来る若者にとっての働くは、どこかの会社に就職することとほとんど同じですが、本当にそれだけでいいのだろうか、ということです。
就職することを否定していません。起業することが就職より素晴らしいとも思っていません。それよりも、働くことが就職することとイコールになっているひとに、「就職だけが働くではないのではないでしょうか」と、いったん止まって一緒に考えてみたいのです。
例えば、月曜日から金曜日まで1日8時間働けば、毎月決まった日にお給料が振り込まれます。もっとお給料がほしいと思ったとき、残業したり、一層ハードワークしたりすることが思い浮かぶかもしれません。でもそれは、自分が所属する会社の中でできることです。
会社が終わった夜の時間や土日、祝日は自分の時間です。この時間を使って収入を増やすことも考えていいのではないでしょうか。最近は副業もよくなってきています(いままでダメだったのですね…)ので、お金のためであっても、誰かの幸せのためであってもいいので、会社では得られない何かのために働くこともできます。
好きな映画や本の感想をブログに書いて、そこから収入を得ることもできます。自分の作品をオンラインショップで売ったり、撮影した写真を販売したりすることだってできます。いまは翻訳サイトも質が高くなっていますので、他の国のひとに商品を売ってみることも簡単にできます。
高校や大学に通いながら起業するひともたくさん出てきています。学生は勉強、「働く」はひとつの会社、自分の好きなことは趣味、と切り分ける時代は昔のものになっています。繰り返しですが、人生がとても長くなったいま、何かにチャレンジする時間はたくさんありますが、「いつかやろう」「いずれやってみたい」ではなく、やれることはいますぐにでもやってみる。ダメだったら次の楽しそうなことをやる。誰もがチャレンジしやすくなった社会ですので、ぜひ、みなさんにはその社会のよい面を存分に生かしていただきたいです。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか