そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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自分のミタメ
~目立たないチガイに気づく~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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街中を歩いていると、奇抜な髪型や服装で目立っている若者を見かけます。その傍らでは、新人社員とおぼしき、まだ折り目がついていない真新しいスーツをまとった同世代の若者もいます。

両者を比べて見るとき、一方を世間知らずで、目立ちたがりの若者、もう一方を常識ある真面目な若者とざっくり括って考えてしまうことはないでしょうか。

「最近の若者は総じておとなしく、自己主張をすることがない」と考えてしまうのは、若者を外見だけで判断してしまっています。確かに、体中に貴金属を装着し、どこの国からやってきたのか区別できない色をした派手な若者は、混雑する駅前でも、人気のない路地でも目立ちます。しかし、目立ちたい、自分に注目してほしいとアピールしているのは、そこらへんの若者も同様です。一見、控えめであっても、他者に気づいてもらいたい。自分を認めてもらいたい。多くの若者はそのような意識を持っています。

以前、私よりずっと年配のTさんとこんな話をしたことがあります。

T:最近は街中で“丸刈り”の若者を良く見るが、さっぱりしていていいね。
私:後頭部を良く見て下さい。全体より少し長くありませんか。後ろ髪を意識的に長めしているのですよ。バリカンなどで刈っているわけではないんですよ。
T:そんな中途半端なことをしないで、“ちゃんとした”髪型にすればいいのに。
私:……
T:周りに知ってほしいなら、たまに見かけるピンクとか、緑色に髪を染めたり、爆発しているような頭をしたり、わかりやすくすればいいんだよ。

髪型や髪の色、服装やアクセサリーの微細な変化を発見するには、日ごろからそれなりにミタメを気にしていなければなりません。とても面倒かもしれません。

しかし、このミタメの差異に気づくようになると、その若者との距離はぐっと縮まります。本当は、若者ともっとコミュニケーションを取っていきたいと思っているとしたら、そんな“目立たないチガイ”に気づいてあげること。そこから若者とのかかわりは始まるものなのです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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