そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

7-2

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デジタルコミュニケーション
~ミク中~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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「ミク中」と聞いたことがありますか。先日、株式会社mixi(ミクシー)が上場したことはニュースなどで大きく取り上げられました。このmixiとは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の1つで、直接の友人・知人をマイミクシィ(マイミク)として登録することができ、日記の更新などを簡単にチェックできる機能を持っています。私も実名でやっています。

「ミク中」は「ミクシー中毒」の略語で、パソコンや携帯電話で絶えずmixiをチェックしていないと気が気でない状況です。高校生や大学生と話をしていると、自称「ミク中」の学生に頻繁に出会います。彼ら/彼女らは「暇なときに適当にのぞいているだけですよ」と言います。しかし、mixiに触れていないと、友人を失ってしまう危険性があることを恐れているのが本音のようです。

日記形式で友人に情報公開をする機能があるのですが、そこにどれだけ早くその日記を読み、感想を述べるのかで友人との「親密度」が決まってしまうのです。これはホームページやブログも同じです。さらに、学校で話す時間、休日に出会う時間とは無関係な基軸で「友人度」が計測されてしまいます。ですから、mixiにアクセスしなくなることは、そのまま孤立状況へ一直線なのです。デジタルコミュニケーションの利便性の裏側には、このような人間関係のやり取りが見え隠れします。

先日、友人から久しぶりに電話が来ました。私とはmixiでつながっています(「マイミク」と呼ばれたりもします)。彼の日記は時たま閲覧していたのですが、感想を書き込むことはしていませんでした。すると、「何か怒らせるようなことを書き込んでいたら謝るよ」と言ってきました。感想を書き込まない側には、友人を失うかもしれないという不安があり、書き込まれない側には、何か怒らせるようなことをしたのではないかという不安がつきまとう。

「ミク中」は、楽しくて、面白くてmixiに熱中するだけではありません。他者との関係密度を計る、計られる尺度としての役割も果たしています。とても便利なコミュニケーションツールではありますが、その裏側にあるモノを見逃してはならないと最近は考えています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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