そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

14-2

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心に響く言葉
~思い切ってやれ~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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「じっくり考えて、自分が納得できたら思い切ってやれ」

自分の進むべき方向、決断すべき事柄で迷っているとき、似たような言葉で励まされたり、同じような表現で元気付けたりすることはないでしょうか。

情報を集め、精査する。
自分の将来を見据えて決断をする。
そして動き出す。

流れとしてはとても綺麗ですが、社会経験をこれから積み上げていく若者にとって、動き出すまでの決断プロセスが3つもあれば、悩み、迷い、立ち止まってしまうのは仕方のないことです。こちらは励ましているつもりでも、実は混乱させてしまう結果になることはしばしば起こります。

神奈川県にNPO法人子どもと生活文化協会があります。そこの和田会長は、悩みを抱える若者に対して、非常に興味深い言葉をかけています。

「思い切ってやれ」

こちらが抱えている悩みを打ち明けて、ただ「思い切ってやれ」と言われただけでは動き出せません。しかし、和田会長はその言葉の意味をしっかりと説明してくれます。

「何かを思い切ってやるためには、『思い』を『切る』ことが必要です。つまり、悩んだり、考えている間は行動に移すことはできない。どこかで考えることを止め(思いを切って)、とにかく“やってみる”ことが大事なんです」

私は、和田会長の言葉を聞いて、「もっと情報はありますよ」「じっくり考えましょう」「将来に関わることですから、先々のことも思い描いて」と相談者に伝えていたのは、時に相手を混乱させ、苦しめていた可能性があったことに気がつきました。

もちろん、初めから考えることを放棄して、思ったことに邁進することが素晴らしい、ということではありません。情報を獲得したり、それを整理したりすることは大切です。しかし、ネット世界にある情報、他者からのアドバイスは無限であり、何もかもを取り入れることは不可能です。

ひとは必ず迷います。将来に不安を抱えます。だから、他者に相談をしたり、経験者の話を聞いたりして、情報を集めます。ただ、どこかで踏ん切りをつけなければ、次への行動はできません。だからこそ、ある一定の段階まで考えを深めた若者は、和田会長の「思い切ってやる」という言葉に共感し、考えることを止め、一歩踏み出すのです。「思い」を「切る」ことはとても勇気のいることですが、決意を固めて踏み出した先には、案外、よいことや、学びがあるものです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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