そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

14-1

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心に響く言葉
~不真面目に、でも真剣に~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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学校や会社からスピンアウトしてしまう若者がいます。怠けているとか、やる気がないわけでもありません。むしろ、復学や再就職を目指して相談に来ます。相談に来るくらいですから、無目的なわけがありません。

話を聞いてみると、勉強がさっぱりわからないとか、仕事ができなくてクビになったというわけではない。なぜスピンアウトしてしまったのかと問いかけると、人間関係の問題や、心の病気を患ってしまったことが原因だと言います。

一回の相談で相談者である若者のすべてはわかりませんが、一緒に過ごす時間が増えると何となく見えてくるものがあります。それは極度に真面目な性格が裏目に出ることがある、ということです。

保護者の期待に100%応えようとしたり、職場の業務を1から100まで完璧にこなそうと、残業を続けるような性格だったりします。時間がなければ息抜きもせず、周囲が休憩していても一心不乱にやるべきことをこなそうとします。「気がついたら、周囲の人間が僕と距離を置いていた」という結果になったり、長時間労働により、集中力と作業効率の低下が、一層の残業を強いる悪循環にもなります。

真面目であることは一つの才能です。物事をきっちりこなすことは誰にでもできることではありません。ただ、過度に杓子定規であったり、正義感が強かったりすると、周囲から浮いてしまうことがあります。いかに成すべきことと、心身のバランスを取れるかが重要です。

「若者の可能性を最大化する」を理念に、渋谷で若者の支援活動を行っているNPO法人コンポジションの寺井代表がこんなことを言っていました。

「不真面目に、でも真剣に」

私はこの言葉がとても新鮮でした。それまでは、真面目過ぎる若者には、少しくらい“手を抜く”ことも必要だと話していました。そうすると、真面目な若者は、真面目に手を抜こうとします。手を抜くことと、だらけることを混同してしまう若者もいます。

寺井代表の言葉は、何もかも全てを完璧にこなすことは難しい。多少は不真面目な時間や空間があってもいい。ただ、やるからには真剣に、やるべきことはしっかりとやるのが大切であることを伝えているのではないでしょうか。

不真面目な時間や空間を活用するには、バランス感覚が必要です。もともと、この感覚を持ち合わせている若者はよいのですが、そうでない若者に、「不真面目さ」をいかに伝えていくのかが、大人の課題となっています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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