若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
16-216-2
若者とITを考える
~後編~
工藤 啓(くどう・けい)
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日本にインターネットが広がって10年余りが経ちました。日本においては、IT分野は世界に遅れを取っているようです。シリコンバレーで活躍されていたアリエル・ネットワーク株式会社代表取締役社長の小松宏行さんは、「この世界はオープンソース。誰でも国境を越えてつながることができる。しかし、英語を苦手と考える日本の若者の参加は少ない。学歴よりも、技術よりも、勇気が大切」とおっしゃっていました。
その話を若年者IT基礎訓練プログラム参加者にすると、「ヤンキースの松井や、セルティックの中村でなくても、世界に出られる可能性があるんですね。ひきこもっている僕でも、自宅からネットを通じて世界に飛び出せるかもしれない」と冗談交じりに話していました。彼は高校中退で、パソコンもメールとインターネットくらいしかできませんでしたが、案外、日本を越えて世界に飛び出そうとしているのではないか。そう思わせるくらいに熱中しています。
25歳で働いた経験のない女性は、「人と話をする仕事は苦手。正社員で採用されることは諦めていました。でも、IT業界は求人がすごくあって、企業の人の話でも人材不足は本当みたいで、希望が持てます」と、IT関連企業の方から聞いた人材不足の深刻な状況に対し、前向きに講座を受講できるようになりました。
私は、若者の就労を支援しているなかで、いま、IT(プログラミング)に大きな期待を抱いています。人材不足であることはもちろんですが、体力ではなく、体が強くない人や、アトピーなどで汗がかけない人などにもチャンスがある業界に思えるからです。
もちろん、職場によっては、寝る暇もなく、過重労働を強いられるところもあるかもしれません。逆に、素晴らしい職場もあるでしょう。スキルを身につけるのは本人次第ですが、就業先はこちらでも選定のお手伝いができます。若者自身とNPO、そして企業が一体となって支援できる新たな可能性を、若者とITの関係に見出しています。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか