そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

17-2

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もう1つの「働く」価値観
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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「7・5・3現象」という言葉が社会に定着したように思います。

卒後3年以内に勤めた会社を離職する率を表した言葉で、大卒者の3割、高卒者の5割、中卒者の7割が3年以内に離職しています。その割合は年々高まっているようです。その中でも、「社」や「職」に就くことなく、自らの意志とチカラで未来を切り開こうとする若者が台頭してきました。

「自分」に「就く」若者を、私は「就自」と表しますが、ベンチャー起業家やソーシャルアントレプレナーと呼ばれることも多く、メディアでも頻繁に取り上げられています。一時、若手IT起業家が非常に注目されましたが、彼ら/彼女らに触発され、「自分もやってやる!」または、「自分にも社会のためにできることがあるのではないか」と、既存の会社に就くのではなく、自ら会社なり、NPO法人なりを設立し始めました。

ただし、会社を離れた若者全員が全員起業するわけではありません。起業そのものへのハードルの高さもあります。経験も実績もない人間や会社はそう簡単には信用されないことは若者も知っています。そうなると、新しい技術、優れたアイディアで勝負したり、地域密着型で市民の一員として活躍する分野に多く起業家が進出したりするのも理解できます。

若者の早期離職が取り沙汰される一方、「就社」「就職」でもなく、「就自」でもない価値観を重要視する若者が非常に増えている印象があります。それが「就人」です。

どの会社がよいのかわからない。自分が一生をささげられる職業・職種も見えない。それならば、自分自身が尊敬できる、「就」いていきたいと思う「人」を頼りに、自らのキャリアを積み上げていくものです。これは、特定の「人」に依存するのとは違います。自らのインスピレーションを信じ、職場で悩みや苦しみがあっても、最後の最後で離職せずに踏ん張れる理由が、「この人と一緒にやっていきたい」という強い想いがベースにあるのではないしょうか。

現在は少子高齢化と高い離職率を背景に、“採用氷河期”に入っています。よく会社の資源は「人」「物」「金」「情報」などと言われますが、その中でも強く「人」に惹かれ、「人」に「就く」、そこに価値観を置く世代が台頭しています。

若者を掴むには、企業規模や将来性、ビジョンよりも、「人」を前面に押し出したPRが必要になってきているのかもしれません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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