そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

19-2

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大人への通過儀礼を考える
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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目の前に若者がいたとき、社会の側が、彼/彼女をひとりの大人として認め、対等の関係性を持とうとする価値観は非常に大切であり、それが若者を大人へと成長させるのではないでしょうか。ただ、成人式という現代の“大人への通過儀礼”を考えると、20歳になったすべての若者が大人になる精神的成熟度を持っているかと言えば、それは難しいでしょう。

遥か昔、大人への通過儀礼が「元服」と呼ばれていたころは、すべての人間が豊かな暮らしをしていたということもなく、平均寿命も30歳から40歳でした。15歳前後となれば、人生半ばであり、大人であることを求められました。成人式が生まれた60年前は、いまと比べるとまだまだ貧しくはあったでしょうが、人々の暮らしは少しずつ豊かになっていったのではないでしょうか。当時の平均寿命は60歳くらいであり、大人への通過儀礼は20歳と定められました。

「成人式」ができてから60年経ったいま、科学技術や医療の発達により社会は豊かになりました。乳幼児死亡率が下がったこともありますが、平均寿命は70歳から80歳前後と、人生はかなり長期化してきました。この流れを考えると、社会が豊かになり、人生が長期化するにつれ、ゆるやかに“大人と見なされる”年齢も上昇していくように思います。しかし、いまもまだ「成人式=20歳」であり続けています。

私は、成人式が不必要であるとは思っていません。やはり、何らかの通過儀礼を持って成長を自覚する仕組みは必要だからです。私のアイディアとして、ひとつは20歳でなく、30歳くらいを節目として通過儀礼を行うというのがあります。30歳となれば、多くの若者は社会の一員として自己の成長を実感できている時期ではないかと思うからです。もうひとつは、10歳、20歳、30歳の10年ごとに何らかの通過儀礼を段階的に行うものです。日々の成長は認知しにくいかもしれませんが、10年の歳月を振り返るときにはさまざまな知識や経験の蓄積を思い描くことができるでしょう。

時が経てば、いろいろなものが変化していきます。大人への通過儀礼である「成人式」が意味あるものとして存在していくためには、それもまた変化が必要とされるのかもしれません。もう一度、社会全体で大人への通過儀礼とはどうあるべきかを考えてみるのもよい時期に来ているのではないでしょうか。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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