そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

20-1

20-1
シンユウがたくさん
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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先日、都内で講演をしました。若者とコミュニケーションの関係性について、日ごろの活動を通じて考えていることをお話ししました。寒い中、会場にいらっしゃった方々は、常日ごろから何らかの形で若者とかかわりがあるように感じられました。講演が終わり、パネルディスカッションに移るまでの時間、水の入ったペットボトルを片手に座席に座っていたところ、年配の方から声をかけられました。

挨拶もそこそこに、突然、「私は中学生とかかわることが多いのですが、最近の中学生はシンユウがたくさんいるというのをご存知ですか」と聞かれました。親友がたくさんいるのはとてもよいことだとは思うけれど、私にとっての親友はごくごく少数で、たくさんいるというわけではありませんとお答えしたところ、「私たちの世代もそんなものですよ」とうなずかれました。

最近では、とても仲の良い友達から、学校で挨拶を交わす程度の友達までをすべて「シンユウ」と呼ぶそうです。ただし、それぞれの「シンユウ」には当てはめるべき漢字が異なり、ある意味、ランク付けされています。

第一のシンユウは「新友」です。小学校から中学校、中学校から高校、大学、バイト先、就職先など、新しい環境で出会った仲間のことを表します。まだ、互いのことをよく知らず、これから仲良くできるのか。価値観は合うのか。プライベートでも時間を共有するのか。不安と期待が入り混じったなかで会話を交わす“これから”の関係である時期にある友達を示します。

第二のシンユウは「親友」です。時間を共有し、プライベートで一緒に出かけたりする友達です。私がイメージする親友は、切っても切れない“親”とのつながりほど強い関係なのですが、そうではありません。文字通り、“親しい”友達のことで、驚いたのは、そこに信頼関係の有無が強く問われないということです。

時代が変われば、言葉の意味に変化が起こることは特別珍しいことではありませんが、これまで使っていた「親友」という言葉の意味づけが、ただ“親しい”友達であるということには驚きがありました。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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