そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

20-2

20-2
シンユウがたくさん
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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「親友」は、“親しい”間柄にある友達を言い示す、ということに驚いたと前回は触れました。それでは、いまどきのワカモノは、親しい以上の友達をどう表現しているのでしょうか。

そこで登場するのが第三のシンユウである「信友」です。親しい友達を信用しないということではなく、「信友」の言うことに余計な疑問を持たないということです。仮に、それがにわかに信じがたいことであっても、彼/彼女だからこそ信じられる。人間関係がかなり密な段階を示すのではないでしょうか。

もう、この第三の段階まで来れば、昔の「親友」と同様なのではないかと感じるのですが、そうではないそうです。それが第四のシンユウである「心友」です。自分の心を開いて話しができる無二の存在です。確かに、心を完全に開いて話しができる友達は大変貴重ですが、これを聞いたときに、私はマンガ「ドラえもん」に登場するジャイアン(剛田 武)が浮かびました。

なぜ、友達にこのようなランク付けのようなものをするのでしょうか。好き嫌いならまだ理解ができますが、きっちりと人間関係を区分することには冷たさすら感じられる気もします。ただ、少し冷静に考えてみると、もしかしたら、それは「自分を守る」ためのシグナルなのではないかと思うのです。

最近、「学校裏サイト」がメディアで取り上げられていますが、クラス内では仲良く付き合っているつもりでも、ネット上の掲示板などで中傷していたり、他の友達には携帯メールで悪口を言っていたりするような報道があります。本当は一部の特別な事象を大きく取りあげているだけなのかもしれません。しかし、「全て本当のことだとしたら」と考えてみると、誰にどこまで、何を話せるのか悩むのも無理はありません。悩むというより、恐れるべきものなのかもしれません。

TPOに合わせたコミュニケーションで自分を守る世代。私には、大人社会で垣間見えるようなことが、いつの間にか、若者にも伝播しているように思えます。私たちの時代の「言葉」は、いまどきのワカモノに同じ意味を持って使われているとは限らないのです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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