そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

23-2

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働き始めた若者
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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前回は、某メガバンクの新人研修で出会った若者の積極性、主体性を書きましたが、そのような企業に入社できる若者だから違うのだろうと言われてしまいそうです。しかし、彼ら/彼女らが特別な存在だと感じてはいません。職種や職場によって求められる力は画一的ではありません。個人の潜在力を活かせる場所との巡り合わせが大切なのです。

先日、他者と話をすることがとても苦手な若者が、某IT企業から正社員採用を獲得しました。彼はインターンシップ期間中、「与えた業務への遂行能力が求めている水準に達していないため、採用は見送らせてほしい」と担当者より聞かされていました。こちらもそれでは仕方がないとあきらめていたのですが、別の日に「やはり、採用させてほしい」と再度、電話が掛かってきたのです。

驚いて理由を聞くと、「面接の印象からできそうな業務を割り当てたのだが、最後にもっとレベルの高い別の業務をやらせてみたところ、予想を裏切るほどの能力を発揮したため」と言います。

面接時はどうしても“話すこと”を中心としたコミュニケーション能力で判断されてしまいます。しかし、企業が必要とする業務遂行能力と話す能力には必ずしも相関関係があるとは限りません。ですから、実際にやらせてみたら期待以上だったという例は少なくないのです。

高校卒業後10年間フリーターだった男性は、ある人材会社の専門相談員の面接で不採用となりました。理由は、「ちょっと会話のテンポがゆっくりで、この業務に適性が…」ということでした。不採用の電話を受けたとき、彼は面接に応じていただいたことへの感謝を述べ、後日、担当者へお礼の手紙も差し出しました。

就職活動を継続していると、不採用通知を貰った人材会社から再度、連絡がありました。「専門相談員ではなく、人材育成事業をバックアップする役割を担ってもらえないか」とのことでした。事業が多忙になれば、部署の雰囲気が殺伐としてしまう。そのようなときには、彼のようなおおらかで、きめ細かい性格の社員に下支えを任せたいとのこと。どうやら手書きのお礼状が採用担当者の印象に強くアピールしたようです。

働き始めた若者たちは、大人社会が発信するイメージとは違う気がします。一部の若者が“そこらへんのワカモノ”としてひとくくりにされてしまうのはいかがなものでしょう。個性を尊重せよ、とは言いませんが、一人ひとりを“見られる”大人を増やすことが、若者の持つ力を引き出す源泉になるかもしれません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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