そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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原体験を見る
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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ひとを雇うというのはとても難しいものです。ハローワークなどで専門家の指導を受けて作成された履歴書や職務経歴書は、どれも似通ったものになります。採用面接も1時間程度ですし、採用を判断する材料はほとんどないといってもいいくらいです。

一方、どんなに素晴らしいひとでも、組織の雰囲気や仕事のやり方が合わなければ、仕事は続きません。1日8時間以上もの時間を仕事に費やすわけですから、「嫌だな、やりたくないな」という思いを抱えながらでは苦しくなってしまいます。

書類選考と短時間の面接で採用・不採用を決めなければならない。しかし、マッチングがうまくいかないと、採用した会社も、採用された本人もハッピーになれません。採用者、求職者がどちらもハッピーになれるマッチングのためには何が必要なのでしょうか。わからないときは、わかっているひとに聞くのが一番いい。

早速、私は複数の経験豊富な人事担当者に聞いて回りました。すると多くの方々が「なぜ、その仕事に就きたいと思ったのか。その原体験を聞きなさい」と言います。つまり、その会社で働きたい理由でもなく、仕事で達成したいことでもなく、目の前の求職者がこの仕事を選ぶに至った、何かしらの体験・経験が大事だというのです。そして、「相手が語る原体験が、募集している業務内容と合致している場合は、採用者も求職者もハッピーになれる」とも言っていました。

なるほど、人事採用のプロは“原体験”を聞いて、採用の判断材料を作っているわけです。となれば、求職者は職場選びにあたっては、会社がどうかということも大切ですが、業務内容と自分の原体験が合っているのかを真剣に考えなければなりません。そして、採用面接では、“原体験”を真摯に語ることで採用に一歩近づけるということになります。

同じようなことは書籍やネットでも書いてあることかもしれませんが、実際に「採用することを仕事にする」担当者から聞くと、“ズシン”と重たいものがあります。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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