そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

30-1

30-1
働き方を模索する
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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大学生の就職活動が活発化してきました。中途採用の枠が広がったとか、労働市場が流動化しているとか、いろいろと言われますが、やはり、“新卒”というのは、自らが望む企業の一員になれる大きな機会のひとつだと思います。公務員を志望する若者にとっても同様です。

だからこそ、学生は悩みます。自己分析は「自分とはどのような人間であるのか」を、真正面から向き合って考えなければなりません。これは本気でやればやるほど苦しい作業です。唯一の“正解”もなければ、ここまでやれば終わりといった区切りもありません。

自分にはどのような仕事が向いているのか。何ができるのか。やりたいことは何か。考えれば考えるほど、わからなくなってシンドクなります。さらにそこから業界研究や各企業の分析をする。OB/OG訪問、企業説明会へ参加する。苦行と呼んでもいいくらいです。

そんな中、学生から受ける進路相談の内容に若干の変化が出てきたと感じています。定番だった「自分の行きたい企業がわからない」「どこに就職をしたらよいのか決められない」といった“どこかの会社の一員になる”ための相談はいままで通りなのですが、どのような“働き方”をしていくのか。そういう相談が少しずつ増えています。

働き方といっても、正社員か派遣社員か。契約社員かフリーターか。そういう話ではありません。これまでの「大学を卒業したら、どこかの会社で正社員として働く」という軸があって、かつ、卒後モデルで迷うのではなく、NPOで働くとか、自ら起業するとか、そこで悩んでいます。これまでの学生が悩む軸とはまったく異なる軸で迷っているのです。

なぜ、そのように“働き方を模索”するのか。大きな要因のひとつとして、多様な価値観を持つ大人に触れるチャンネルが増えていることが挙げられるのではないでしょうか。NPO活動に従事している大人。自ら起業した大人。企業人として利益を追求しながらも、その一方で、培った能力を社会還元している大人。そういう大人との出会いが学生を刺激し、就職をする以外の選択肢もアリかも、企業人でありながらも社会活動ができる環境を持つこともイイかも、と思わせているように感じます。

私が、彼ら/彼女らを「すごいな」と思うのは、そういう大人をただ憧れの眼差しで追いかけるのではなく、自分の生き方、考え方とリアルに照らし合わせた上で悩んでいることなのです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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