若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
30-230-2
働き方を模索する
~後編~
工藤 啓(くどう・けい)
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環境活動に取り組む友人がいます。インターンシップとして活動に参加している女子学生から「株主のためとか、会社のために働くことが馬鹿らしくなりました。もっと自分が生きている間にやるべきことがあるんじゃないかと思うんです」という相談を受けて、非常に困ったといいます。
友人は環境活動も企業活動も、どちらも大きな社会性を帯びていると考えています。会社は、“雇用する”という社会貢献を果たしているからです。そこで、「それならやりたいことをしてみたら?」と質問してみたところ、女子学生は「自分の生活も大事にしたいので、ある程度の給料は必要だ」と言います。やるべきことはある。しかし、安定した生活も無視できない。いまも彼女は将来を模索しています。
原体験が進路決定に大きな影響を及ぼしている学生もいます。昔の素晴らしい記憶を残した地元の街が荒廃していく。実家に帰省すれば、誰もが地元の状況にため息をついている。だからこそ、自分を育ててくれた街を盛り上げたい。もう一度、皆の笑顔を取り戻したい。しかし、街の再興を仕事にすることはできるのか、就職経験もなくやれるのか。自分で起業することは簡単ですが、仕事を創り続けることができるかはわかりません。彼は、毎日悩んでいます。
まずは企業に行くことが近道である、と確信した学生もいます。複数のNPO団体に関わり、その活動の素晴らしさと、団体の財政基盤の脆弱さを目の当たりにし、「こういうような活動が継続できる“仕組み”が社会には必要だ」と強く感じています。そして、そのためにはNPOのよさを活かしつつ、企業活動のよさも取り入れていかなければならない。彼はそう考えました。現在は、コンサルティング会社、金融系企業を中心に就職活動をしています。その彼は言います。「まずは5年くらいでノウハウを蓄積したいんです。そして、NPOを支援する会社を創ります。ひとつだけわからないのは、いまの自分の想いが5年後も継続しているのかどうかなんです」。
どうでしょうか。多くの若者が“働き方”の模索を続けています。過去のそれとは内容が変化してきています。大学から会社への移行を遂げるのが大多数ですが、それを受け入れつつ、他の道もアリではないかと考え、悩む。たくさんの大人との出会いが、悩むための材料として活かされています。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか