そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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若者の不安とひとのつながり
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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先日、タレントの安田美沙子さんとお話をさせていただきました。普段、あまりテレビを見ない私ですら知っている有名なタレントさんです。最近では東京マラソンを完走されたことも話題になりました。

「自立」をテーマにしたイベントだったのですが、会場には多くの若者の姿を見ることができました。最初は、「安田美沙子さんを見に来たファンの方々だろう」と思っていたのですが、どうも雰囲気が違います。会場質問の際、若者から積極的に手が挙がり、彼ら/彼女らの質問を聞くと、ただのファンでないことがわかりました。

「就職活動中なのですが、自分のやりたいことがわかりません」
「自分の決断に自信が持てません」
「不安なとき、どのようにそれを克服しているのでしょうか」

いまの自分が選んだ道は将来につながっている。しかし、その道がどのような将来につながっているのかわからない。不安である、というのです。一方、テレビや雑誌で活躍される安田さんも、過去に抱えた不安(芸能界でやっていけるのだろうか……など)を吐露しつつも、将来に対しまったく不安がないということはないとおっしゃっていました。

それを横で聞いていて、「いまどのような状況であっても、若者は将来に漠然とした不安を抱えながら、それでも前に進もうとしている」と感じました。多かれ少なかれ、誰でも不安を抱えています。しかし、誰もがそれを乗り越えて決断する力を持っています。では、その際に必要なものは何なのでしょうか。

会場の質問に答えるにあたり、私は「ひとのつながり」が大切であると伝えました。不安を少しでも解消するために相談できるひととつながっているか。自分の決断に対して背中を押してくれるひととつながっているか。悩んだり、前に進むことを躊躇したりしたときに支えてくれるひととつながっているか。

そのつながりは、友達が何人いるのか。携帯電話のメモリーがどれほど埋まっているのか。そのようなことでは決してありません。自分のことを理解してくれたうえで、弱音を傍で聞いてくれたり、時には叱咤激励をしてくれたりするひとの存在です。

不安は誰でもが抱えるものですが、それを克服するためにはどれだけ“ひととつながっているのか”が重要だと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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