そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

31-2

31-2
若者の不安とひとのつながり
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:
 更新:

将来に対する不安がまったくないひとは少ないと思います。誰でも多少は決断を迷ったり、選んだ道が本当に正しかったのかを考えてしまったりすることがあります。それにしても、若者の多くが将来に対して不安を抱えると同時に、あまり希望を持っていない、持たないようにしているのは大変な事態だと思います。

もちろん、希望を持っていなければいいとか、持っていることがいいというつもりはありません。むしろ、過大な希望、過度な期待を持つことで、現実の社会で愕然としてしまう可能性もあるからです。

私が若者と話をする中で感じているのは、将来の希望も不安も、希望を叶えたり、不安を解消したりするため道筋も、どれもあまりに曖昧で漠然としていることです。そして、その曖昧さ、漠然さを少しでも明確にしてくれる“ひとのつながり”がないことです。

進学や就職に際して抱える不安の相談を受けるとき、私はかなりぶっきらぼうに質問をしていくような気がします。

「そこに進学した先に何を考えているの?」
「内定先に一生勤めるの? 途中で転職したり、起業したりするの?」
「一社で埋もれたくないのはいいけど、じゃあ、その会社の次はどうするの? どうしたいの?」

こんな感じです。ひどいときには、「どうしても決められないなら、私があなたに代わって決断するので必ずそれに従ってください」とすら言います。もちろん、即答で断られます。相談者からすれば嫌な人間でしょう。それがわかっていれば相談しませんので。

悩んでいる友人を傷つけたくない、我が子に嫌われたくない。だから、相談は聞くけれども、悩みを突き詰めていくことはしない。いつまでたっても不安や悩みは解消されないまま、同じことをズルズルと考えるのです。時には嫌われ役を買ってでもするひとも必要なわけです。

ただ、自分自身が納得して決断をした若者からは感謝されます。突き詰められて腹が立ち、悔しいから何とか答えていく。その答えに対してまた問い詰められる。その過程を繰り返していくうちに決断できるのではないかと思うのです。そんな腹立たしいけど、嫌われ役として相談に乗ってくれるひととのつながりがあれば、不安を克服し、希望を持つことができる可能性は高まると思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

新着記事 New Articles