そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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中学4年生
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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高校1年生を対象に授業を行うとき、目の前の学生が“高校1年生”なのか、“中学4年生”なのか分からなくなるときがあります。もちろん、特別な事情を除けば中学校を4年間かけて卒業することはありませんので、中学4年生というのは、高校の1年生課程でありながら、意識は中学3年生のまま、別の校舎で、異なるクラスメートと学校生活を送っている学生という意味です。

私が“中学4年生”を感じるときは、何も授業開始時に静かにできないとか、ワークシートやアンケートに記述ができないとか、そのような場面ではありません。そういう目に見えることではなく、むしろ義務教育を終え、自らの意思で進学を決定したとは思いづらい、個々人の意識や、教室の空気/雰囲気に触れたときに感じるのです。

授業を始める少し前に教室に入るとき、私はそこらへんにいた生徒に話しかけたりします。「あなた誰?」的な目線を向けられることもありますが、大半は快く出迎えてくれます。自己紹介をして、若者の自立支援をするNPOの代表であることを伝えると、「何でそんなことをしているんですか?」と聞かれることがあります。

逆に、私のほうからも質問します。「なぜ、高校に進学したんですか?」「何でこの高校でないといけないんですか?」と。すると、そんなことを聞かれたことがないのか、驚いたような顔をされます。「みんな高校行っているから」「そういうもんだから」「親がうるさいから」といった答えや、「この学校しか行けなかった」「どこでもよかった」「中学の先生に言われた」といった答えもよくもらいます。

矢継ぎ早に、「別に義務教育終わっているんだし、高校に行かないといけない理由はないのでは?」などと質問をしていくと、“面倒臭い人間”という感じで逃げられてしまいます。この手の質問は、大学生であっても“面倒臭い質問”と受け取られてしまうこともあるのですが、自分が選択した「場」に対しての説明に応えられない若者が少なくない気がします。

そして、私が“中学4年生”を感じるときに思うのは、彼ら/彼女らを“中学4年生”にしているのは、やはり、大人の側の責任なのではないか、ということなんです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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