若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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中学4年生
~後編~
工藤 啓(くどう・けい)
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義務教育を終えて、高校への進学を果たした若者のなかに“中学4年生”がいます。それを感じるのは、高校進学の選択が“他立的”である場合です。ただ、自分自身を振り返れば、やはり、“他立的”であったと思います。加えて、「中学を卒業したら高校へ進学するものだ」と疑いなく考えてもいました。私も、しっかりと“中学4年生”を経験していたわけです。
「なぜ高校に進学するのか」について、当時、明確な答えを持っていなかったと思います。しかし、「なぜその高校なのか」については理由がありました。中学の部活(サッカー部でした)の顧問と何度も相談し、自分の学力で入れる範囲のなかから自分が望み、かつ、顧問から見て、私に適しているだろう部活のある高校を選択したという理由です。
“中学4年生”が“高校1年生”になるには何が必要なのでしょうか。私は二つあると思います。ひとつは、自分がその「場」にいることを説明できること。周囲が聞いたら「えっ」と思う説明でも、自分なりに腑に落ちていればよいと思います。もうひとつは、その「場」にいられるのは、多くの場合、自分だけのチカラでないことを理解していること。授業料は誰が払ってくれているのか。保護者からの授業料はもちろんですが、税金だって使われています。お金のことのみならず、先生や地域の方々も学校という「場」を支えてくださっているはずです。それが理解できれば、「みんなが行くから」とか、「親が行けといった」などという言葉が簡単には出てこないはずです。
私は、“中学4年生”という現象は、大人の側にも責任があると言いました。それは大人の側が、彼ら/彼女らに対していろいろな「なぜ」「どうして」を質問することで、自分のいられる「場」への理解を促していないのではないかという疑問があるからです。質問されれば考えます。そのようなきっかけを皆で創り出す、そういう社会を創り出さなければならないのではないでしょうか。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか