そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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自分と仕事の関係性
~3つの「ワーク」~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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フリーターやニートの話になると、相変わらず、年配の方々から「働かざるもの食うべからず」という格言をいただきます。労働対価として賃金を得て、貨幣経済のなかで生きていくのだから、という意図はわかりますが、「働く」はそれだけではないのではないかと常に考えています。

食うべからず論を基準にした「働く」は、言ってみればライスワーク(Rice Work)です。生きるエネルギーのため、衣食住確保のために働くのは重要ですが、それが目的になってしまうと行きつくところ“仕事を選ぶな”になるわけです。特にいまのように働く場が非常に乏しい時期によく出てくる考え方です。

一方、教育段階では「やりたい仕事」を中心に将来の「働く」を考える機会を提供することが多いようです。小さい頃に自分が憧れた職業や、日常生活のなかでちょっと気になる仕事。足が速いとか、手先が器用とか、自分が得意としている物事から仕事を発見するようなワークショップもたくさんあります。自分の「好き」を仕事にするのはライクワーク(Like Work)です。好きだからこそ一生懸命になれるし、もっとうまくなろうと努力もできます。個人と仕事の素敵な関係性だと思います。

ライスワークやライクワークに加え、最近では自分の人生を懸けて成し遂げたいことを「仕事」にしていくひとたちが増えています。特に若い世代の想いに、理解と能力のある人生の先輩が手を貸して、社会をよくための仕事を創造しています。社会的企業という言葉もだいぶ市民権を得てきました。まさに、ライフワーク(Life Work)です。

それぞれの「ワーク」の有り方は、個人と仕事の関係性において優劣ありません。あくまでも、自分が人生の多くの時間を使うであろう仕事というものに、どのような価値観を見出すかの違いなのです。趣味や興味を追及するため、仕事はその時間を担保する手段であればライスワークも立派な個人と仕事の関係性です。人生を懸けてでも成し遂げたいことを仕事にする。そしてその仕事が心から好きであれば、ライフワークとライクワークは一体となります。それぞれの「ワーク」は独立しているわけではありません。

幸いにも、私は3つの「ワーク」がすべて現在の仕事に集約されています。最近、学生から受ける相談内容も変化してきています。この3つの「ワーク」をいかに融合できるか、を真剣に考える若者が増えています。もし、自分と仕事の関係性に迷いがあれば、周囲にいるひとびとに「あなたにとっての仕事って何ですか」と聞いてみましょう。さまざまな答えのなかで、自分が惹かれるものがあれば、まずはそこから仕事への手掛かりをみつけていくことができるのではないかと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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