そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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未来を志す
~目的ある進路決定~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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都内私立高校教諭の“社会に貢献できる大人になってほしい”との想いに共感し、生徒数10名ほどの少人数クラスで講義をさせていただきました。

ワークショップ形式の講義終了後、数名の生徒の相談を受けました。そのうちのひとりは、都市工学を勉強するために進学するといいます。都市工学を専攻する理由を聞いてみると、衰退する街並みを再生するためであり、既に「街」と「アート」を組み合わせた新しいアイディアをあたためています。

都市工学について無知なため、そのアイディアが実現可能なものなのかどうか判断しようもありませんが、独創的かつ具体的で、周囲のひとびとに何度も話をしているのか、その説明によどみがありません。

私は何も助言することができない領域でしたが、衰退する街の再生は日本各地の地域課題です。20歳にも満たない学生が日本の未来にビジョンを持ち、志高く行動する姿に感銘を受けました。自らの「想い」と「力」でイノベーションを起こし、社会をよくしようと考えています。本当に高校三年生なのかと思うくらいです。

担任の先生と相談し、その学生に外資系企業で社会貢献関連の事業を担当する知人を紹介させていただくことになりました。「日時の調整にはE-mailがあったほうがやりやすいし、短い時間で相手にアイディアを伝えるための工夫もしないとね」と話したところ、数時間後には新規登録したE-mailアカウント(携帯メールのみ所有していた)から連絡をいただきました。そして、数日後には「PowerPointでまとめてみたいのですが、どう思いますか?」との提案までいただきました。

普段の学校生活に部活、受験勉強もこなさなければなりませんので、ゆっくり構想を練って、企画作成してくださいと伝えました。自らの力を社会に役立てたいと考える大学生が増えていると言われます。個人的にもそれを実感しています。しかし、いまや高校生までもが公共を担う一員としてビジョンを持っていることに、日本の将来は捨てたものではないと感じました。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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