そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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未来を志す
~行動してから考える~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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毎年、都内の私立大学でゲスト講義をしています。授業のテーマは“キャリア”を考えるものですが、履修される大学生に変化が起こっています。初年度は20名ほどのクラスが、翌年には40名を超え、今年は80名近くの学生が履修されていました。年を追うごとに学生は積極的になり、講義の枠を超えて行動を起こす学生も増えています。

ある男子学生が講義の翌日にメールをくれました。「一度お会いして話がしたい」というので、日程を調整し数日後にお会いしました。大学入学後、文武両道を志すも体調の関係で入部することができず、アルバイトをしながら悶々とした学生生活を送っていたそうです。

勉強とアルバイトの両立はできる。しかし、新聞やテレビを見ていると日本社会はどうも問題をたくさん抱えているらしい。彼はそのような疑問を抱えつつ、時折、自分たち学生だからできることがあるのではないか。何か行動を起こさなければならないのではないかと友人に話してみるも、「普通はそんなこと気にしない」「俺たちの問題ではなく、政治家や官僚が何とかすべき」といった感じで、議論にもなりません。

「自分の周囲には社会を何とかしようとするような友人がいないのだが、そのような大学生は少ないんですか?」と聞かれました。すべての大学、短大、専門学生のうち何%かはわかりませんが、“志”と“行動力”を兼ね備えた学生は確実にいます。私の学生時代と比べれば飛躍的に増えている気がします。

しかし、同じ志を持つ仲間に出会うためには行動しなければなりません。社会的領域に関心を持ち、よくわからないけれど“とにかく行動”した先によき出会いや経験がある。そのようなことを彼には伝えました。

認識や志が「行動」に至るにはさまざまなハードルがあります。金銭的なハードル、時間的なハードル、心理的なハードル。それらのハードルをひとつひとつ越えている間に、「認識」したときのモチベーションは下がり続けます。これは学生のみならず、社会人でも同じです。気がつくとやっていないこと、結局やらなかったことたくさんありませんか?

しかしながら、彼が素晴らしかったのは、ほとんど考えることなく行動をしたことです。行動しながらそれらのハードルを丁寧にクリアし、数週間で行動のための環境を整えてしまいました。最近の若者には“行動力が足りない”といった話は本当でしょうか。むしろ、行動に移すことを躊躇させない社会の在り方が、若者の変化についていけてないように思えます。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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