若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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学び直しの取り組み
~学び直しのニーズ~
工藤 啓(くどう・けい)
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私は、18歳以上の中退経験者や社会参加を目指す若者に「学び直し」についてのヒアリングをしました。彼ら/彼女らが「学び直し」と聞いて何を思い、どのような学習機会を求めているのかを知りたかったのです。
大変興味深かったのは、学び直したい内容よりもその理由にありました。以下、ニーズの大きかった内容とその理由を挙げてみます。
●国語/漢字習得
履歴書を書きあげる際にきっちりとした漢字のとめ、はねを学習したい
履歴書に「漢字検定」を記載することにより少しでも空白を埋めたい
●英語/コミュニケーション
外国の方に道を聞かれたときにちゃんと道案内がしたい
海外旅行をしてみたいのだが、英会話への不安を取り除きたい
●数学/各種
学校の授業でついていけなかった過去を清算したい
数字や計算への苦手意識を取り払いたい
国語や英語という教科名は予想できましたが、意外にも数学への「学び直し」ニーズが高いことに驚きました。数学の授業についていけず成績も下がる。問題が解けないから放り投げてしまう。そんな過去の自分への“リベンジ”の意味合いもあるようです。さらに、彼ら/彼女らにとって“勉強ができる”ことと、“数学が得意/数字が苦にならない”ことは同じような意味を持ちます。「学び直し」というと、とかく苦手な教科に注視しがちですが、「学び直し」を欲する若者の声を聞くと、何が本当に必要とされているのかがわかります。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか