そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

47-2

47-2
地震のとき若者は
~情報を拡散する~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:
 更新:

地震発生直後から電話が使えなくなりました。固定電話も携帯電話もつながりません。私はテレビが見られる環境でしたが、東京都内では電車は動かず高速道路も閉鎖。いまどこで何が起こっているのかを知るためにインターネットは大きな力となりました。

私はTwitterという140文字以内の短い文章を投稿し、閲覧ができるコミュニケーションツールを開いていました。そこには何十万人、何百万人が地震についての文章を投稿し、携帯電話など限られた手段しかないひとびとに情報を発信していました。少しでも貢献できるのであればと、私も積極的に参加しました。

路上には交通機関での帰宅ができなくなってしまった「帰宅難民」であふれかえりました。辺りは暗くなり、気温も下がってきます。高齢者や小さな子ども、妊婦や障碍を持たれている方のみならず、誰もが“どうしたらいいのか”不安でたまらない夜となりました。

そのときTwitter上では、本当に多くの情報が拡散されていました。避難所として校舎を開放した教育機関。食事や暖かい飲み物を提供するレストラン。復旧により動いた電車の路線と区間。私も、職場で妊娠中の妻が動けずにおりましたので、「お腹が大きくなくても『マタニティーマーク』という小さなホルダーを付けているひとがいたら優先してあげてください」と投稿しました。すると何百人というパソコンの画面の向こう側にいるひとたちが、その情報をさらに多くのひとたちへと拡散してくれました。

これまでの助け合いはご近所さんや、近くにいる学校や会社の同僚など顔の見えるものだけでしたが、先祖から脈々と続く「共助」に加え、いまはインターネットを駆使して見知らぬ他人同士が助け合える社会になっています。今後は「デジタルネイティブ」と呼ばれる、生まれながらにしてインターネットなどが当たり前の世代がどんどん生まれてきます。私は、若い世代は人間関係が希薄になっているといった話がある一方、顔見知りはもちろん、顔の知らない他者のためにも行動できる世代に対し大きな「共助」の期待を寄せています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

新着記事 New Articles