若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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つながりのきっかけ
~その場で印象を残す~
工藤 啓(くどう・けい)
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講演会でお話をさせていただくときや、学校で登壇させていただくときをきっかけに、つながりを持って、そこからプライベートでのお付き合いや、仕事をご一緒させていただくことがあります。これまで赤の他人として生きてきたもの同士が、ちょっとしたきっかけで既知の仲になるわけですから、人生なんとも不思議なものです。
そうは言っても、一会場数百人という場合に、講師ひとりがすべての来場者とつながるかというと、なかなか物理的には難しいのが実情です。そのなかでも、会場にいるたくさんの来場者のひとりとして埋もれることなく、講師とつながりをつくる若者がいるのです。
もともと、主催者やイベント担当者とのつながりを持っていて、そこからさらに紹介を受けてというケースは別に、その場で講師とつながれる若者と、そうではない若者は何が違うのでしょうか?私は、限られた時間のなかでいかに“その場で印象を残す”若者とつながることが多いです。
私は、講演会でたくさん話をされる方からこういう話を聞きました。
「何百人も会場にいるとき、最も参加者とコミュニケーションをとれるのは質疑の時間です。ただ、100人からご質問を頂戴しても全員は覚えられません。強く印象に残るのは“一番いい質問をくれた方”と“一番に質問してくれた方”です」。
私は自分が「一番いい質問をすることは難しい」と考え、とにかく会場質問の際には最初に手を挙げるようにしました。すると、講演会が終了した後、ご挨拶に行くと講師が私のことを覚えてくださっていて、そこからつながりが生まれいまも関係が継続している例はたくさんあります。
また、自分が前に立つことが増えて実感したのは、留学していた米国とは異なり、なかなか会場からの質疑で最初に手を挙げる方が少ないな、ということです。だからこそ、勇気をもって手を挙げてくださる若者のことは強く印象に残ります。一番よい質問をすることは容易ではありませんが、一番に質問することは勇気があればできます。そして、その勇気がきっかけとなってよいつながりができていくものと思います。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか