そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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同じ10代でも差異がある
~社会をよくするために生きていきたい~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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漠然とした不安を持ちながらも、将来は何とかなると思って今日を過ごしている10代がいる一方で、社会的な課題に対して自らの人生を使えるような仕事をしたいという10代もいます。彼ら、彼女らの言う「仕事」は就職先の企業ではありません。自分が強く関わりを望む社会課題の解決に寄与できることが目的であり、その目的を達成するための「仕事」は就職でもよいし、起業でもよい。働き先、働き方は手段でしかないといいう若者もいます。

私がtwitterのスクリーンを眺めていると、そこに一通のメッセージが来ました。都内の大学に通う女性から一度会ってお話をしたいのですがいかがでしょうか、というものでした。その後のメールでは、自分は何者なのか。いま何を考えているのか。なぜ、私に時間を取っていただきたいのか、などが理路整然と書いてあります。私が出版した書籍のみならず、インターネット上から組織の取り組みや、過去の新聞記事などは一通り目を通しているようで、聞くべきポイントは既出の情報ではないところでした。

彼女のように、事前に情報を整理し終えた上で、ポイントを絞って会いたい理由を明確にしてある連絡は、10代ということに限らず、全世代を見回しても稀です。残念ながら、書籍や記事で出ていることを聞き直している間に時間が経ってしまい、本当に聞きたかったことが聞けないまま終わるということ少なくありません。だからこそ、10代後半の女性がそこまで段取りをすることに驚いたのです。

実際に会ってみても、驚きは続くばかりでした。彼女は解決したい社会的な課題をいくつかに絞り込み、これからそれぞれの課題の真ん中に飛び込んで実情を知ろうと計画していました。そのための段取りもほぼ終えています。正直、私が何か伝えられることはなかったのですが、「社会をよくするために生きていきたい」という情熱の具現化に少しだけ助言したくらいでした。

話のなかで、彼女がとても恵まれているなと感じたのは、ご両親も、学校の先生も、周囲の友人も、大人も、みな彼女の想いに耳を傾け、それぞれの立場で彼女を応援していたことです。だからこそ、彼女も躊躇することなくさまざまな世代に飛び込み、自らの志を行動に移せているのだなと感じました。彼女が特別ということではなく、周囲の環境によって、若者の意識や行動は変わるということに確信を持ちました。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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