若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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孤立しやすいとき
~夏休み~
工藤 啓(くどう・けい)
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「スネップ」という言葉をご存知でしょうか?「スネップ」とは、他者との接触のない無業者(Solitary Non-Employed Persons)の頭文字をとったものです。総務省の「社会生活基本調査」という調査から
20歳以上59歳以下の在学中でない未婚者で、普段の就業状態が無業のうち、一緒にいたひとが家族以外に一切いなかったひとびと(調査された連続2日間)
無業で孤立しているひとが日本に100万人以上いることがわかりました。ここでは在学中とありますので高校生や大学生などは含まれませんが、在学中でも望まない形で「孤立」している学生もいるのではないかと感じています。
学校には、夏休みや冬休み、春休みと比較的長期間、部活などがない限り登校することのない休みがあります。僕は毎日部活があったので、お休みなのに学校へ行っていましたが、そうではない友人もたくさんいました。
いま、育て上げネットでは小・中学生の居場所のようなもの(学習スペース)を持っています。担当のスタッフより、「夏休みの間はなるべく多く、長く開所したい」と話がありました。理由を聞くと、両親が共働きで、学校もなく、学童や習い事に通うことがない子どもたちのなかに、ほとんどの時間を自宅にひとりで過ごさなければならない子どもたちがいる。彼らが、少しでも寂しくないよう、友人と会える時間と機会を提供したいというものでした。
そこから話が膨らみ、最後はNPO法人トチギ環境未来基地、NPO法人キズキと協働し、ご寄付を募って、2泊3日のキッズ・サマーキャンプを行いました。私は実家が自営業であったため、夏休みはいつも以上に家族といる時間が多かったのですが、共働きが当たり前になったいま、夏休みのような長期のお休みに孤立しやすい子どもたちがいることを知り、少しでも多くの楽しい機会を提供すること。それが大人社会に求められているのだと感じています。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか