若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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~記載がない≠募集していない~
工藤 啓(くどう・けい)
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大学でお話をさせていただく機会が増えています。テーマも目的もかなり多様になっています。以前は、若者支援の現場で起こっていることや、どんな若者が支援を求めているのかというものが圧倒的に多かったのですが、最近は、NPOの運営経営、行政や企業とのパートナーシップというものから、(経営者として育休を取得してからは)イクメンやワークライフバランスといったテーマもいただきます。
そのなかでも、育て上げネットについての活動を紹介すると、活動内容に強く関心を持ってくれる学生がいます。毎年1名から10名とバラつきはあっても、私たちの組織には、多くの志ある学生がインターンシップを通じて、社会問題の解決に価値提供し、また、自らの成長につなげています。
実は、育て上げネットのWeb Site(https://www.sodateage.net/)には、大学生に向けてインターンシップの募集について記載していません。特別な理由があるわけではないのですが、これまでも興味や関心のある学生はお問い合わせのページを経由して、または、ソーシャルメディアなどを使ってアクセスしてきました。それなので“そういうものだ”という認識を持っていたのです。
しかし、最近になって複数名から「インターンシップ募集のページがネットで検索しても見つからなかったのですが、いまは募集されていないということでしょうか」という趣旨のご連絡をいただきました。私のなかでは、「募集サイトがない」ということと「募集していない」がリンクしていなかったのです。
学生のインターンシップに詳しい知人が教えてくれたのは、インターンシップに関心がないとか、行動力に乏しいということではなく、“直接問い合わせる”ことが苦手でコンタクトのハードルがとても高いということでした。NPOに限ったことではありませんが、社会課題の解決に関心がある素晴らしい学生の行動を促進するためにも、「あなたの力を求めている」ことをしっかりと伝えていく手段を整える必要があるようです。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか