そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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大卒だって無職になる
~若者のやる気だけが問題ではない~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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先日、新しい書籍を出版させていただきました。タイトルは「大卒だって無職になる“はたらく”につまずく若者たち」です。大学や短大、専門学校に進学できるひとが少なかった時代は、大学を卒業して仕事に就けないとは誰も考えませんでした。また、求人数が求職者数よりも多い、経済と景気のよい時期でもありました。

そういう状況のなかで生きてくると、大学を卒業しても仕事に就けないとか、一度会社を辞めるとなかなか再就職が難しい、といういまの日本の状況がどこかでピンとこないのかもしれません。有名な国立大学を卒業しても働き先を見つけられない若者や、大手建設会社に就職したけれど潰れてしまった若者。周りから見ると非の打ちどころがないのだが、働くにあたって見えづらい苦労をしていた若者。

大卒の彼らの話をすると、一部の大人からは「大学まで卒業したのに働けないなんていうことはない。あとは本人のやる気の問題ではないか」という声をいただきます。私が思うのは、働きたい若者に対しての求人が非常に少なく、また、その質も低下していること。そして何より、若者の“やる気”の問題と結論付けても、状況は変わらないし、問題が解決するわけでもないということです。

大学や専門学校への進学を考えるとき、これまでは卒業後の就職まで考えずに学びたい学校を選べばよかったのかもしれません。しかし、就職を強く意識するのであれば、どういう学校が自分にとって必要なカリキュラムを提供してくれるのかをしっかり見ないといけなくなりました。

「とりあえず大学に行っておけばなんとかなる」「みんな進学するから自分もそうする」ではなく、なぜ進学したいのか。その先にどんな将来を見据えるのかを改めて考えてみることも、時には必要でしょう。そういう「なぜ」や、「どうありたいか」を考える癖をつけておくと、何か壁にぶつかったときも長く立ち止まらずに再始動しやすいのではないかと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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