そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

62-1

62-1
アルバイトの選び方
~長期の視点を持つ~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:
 更新:

さまざまなアンケート調査から、「最近の若者は安定志向だ」と言われます。安定という理由から大企業で働くことや、公務員になることを希望する割合が高いからだと思います。私は、安定した場所で働き、安心して生活したいという気持ちは誰もが持っている欲求であり、特に良し悪しを感じません。個人の価値観に他人がどうこういうこともないでしょう。

安定志向の一方で、少なくない若者が正社員になれずに、仕方がなくパートやアルバイトと呼ばれるフリーターとして働いています。なかには、正社員としてやっていく自信がないので、まずはアルバイトから初めたいという若者もいます。

有効求人倍率が1.0倍を下回る地域は多く、限られた仕事のなかでも比較的条件のよいものには老若男女問わず集まり、採用への道は険しくなります。一生懸命就職活動をしても、10社も20社も落ちることがあり、書類選考が通らないこともあります。とても傷つきますし、将来が不安になることもあるでしょう。

やりたい仕事がアルバイト採用から入る業界でも、不本意ながらフリーターにならざるを得なくなっても、長期の視点を持つことがとても大切です。いまから数ヶ月から1年後くらいを考えると不安になるかもしれませんが、3年から5年後に自分がどういう状態になっていたいのか。正社員として働いていたいのか、ずっとやりたいと思っている仕事に就いていたいのか、自信を持って正社員として働けるようになっていたいのか、“ありたい姿”はそれぞれだと思いますが、数年後にどうなっていたいのかがある程度明確だと、それにもっとも近道となり得る職場や職種はおのずと変わってきます。

長期的な視点を持ってキャリア形成を考える、というとなんだか難しいように思いますが、いまはたくさんの専門家が相談に乗ってくれます。ハローワークだと直近の就職相談になってしまうこともありますが(それが目的の場所です)、全国には新卒応援ハローワークやジョブカフェ、地域若者サポートステーションといった若者のための公的な支援機関がありますし、私たちNPO法人育て上げネットのような民間の支援団体もあります。

慣れないと入るのは躊躇するかもしれませんが、「長期的なキャリアについて相談したい」と言えば、丁寧に対応してくれるはずです。どうしても「このひとは合わないなぁ」と思ったら、「他の相談員の方にも相談を受けてみたい」と伝えてみてください。自分が相談しやすいひとを選ぶこともひとつのポイントです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

新着記事 New Articles