そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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つまずかない大学選びのルール
~つまずく可能性があることを知っておく~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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 更新:

大学に限らず、就職や起業を選択しても必ず何かしらの壁にあたります。つまずきます。つまずかないようにしっかり準備をすることは言うまでもありませんが、つまずいたときすぐに身体を起こせることも大切なことです。

前回紹介した「つまずかない大学選びのルール」(山本繁著/ディスカヴァートゥエンティワン)では、新しい環境になって困らないようにしておくべき5つのことを紹介しています。

(1)大学内に居場所をつくる
(2)人とのかかわり方を学ぶ
(3)大学での勉強の仕方を学ぶ
(4)大学生活の目標を考える
(5)自ら動き出す

この5つは啓発的な言葉ではなく、実際に“つまずいてしまったひと”のつまずきポイントを調べたからこその言葉です。私は、大学や仕事でつまずいてしまったひとが、もう一度やり直すことを支援していますが、「本当にその通りだな」と思います。

高校までの生活とは異なり、大学や社会に出ると担任の先生があれこれやってくれることはありません。体育祭や文化祭、修学旅行のように誰もが参加する行事が十分に準備されていることもありません。

そのうえでつまずきやすいひとは(1)と(2)が苦手です。自分の居場所は自分で見つけなければなりません。また、年齢や経験の異なるひとたちと一緒になること、かかわり方がわからなかったり、苦手なままであったりするととても苦労します。毎日通う場所で気心を許せるひとが誰もいないと、そこに行くことがつらくなります。

ある男子大学生は、大学一年生の春にうまく友人を作れないまま、自宅と学校の往復で過ごしてきました。しかし、就職活動をする時期になって気が付いたのは、周囲から情報がまったく入ってこないことです。就活は大変な量の情報と格闘しなければなりません。100の情報があったとき、ひとりだと100を処理しなければなりませんが、50人の友人がいれば、ひとりが2の情報を処理してシェアすればいいわけです。

でも、それができないので勉強をしながら就活もする。情報を処理し切れなくなって臨んだ就活も結局うまくいきませんでした。彼の努力が足りなかったのではありません。大学というまったく新しい環境にうまく馴染むために重要な最初の春につまずいてしまったのです。

これから新しい学年へ進級したり、大学や専門学校に進学したり、職場に入っていく時期です。ぜひ、過去につまずいてしまったひとたちと同じ苦労をしないよう、しっかりと準備と行動をしてほしいと思います。また、周囲の大人はその準備をサポートできるよう、同じく準備をしていきたいですね。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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