そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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調べてみること
~「みんな」って何人?~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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テレビとかネットを眺めていると、「なんと、82%のひとが使っています!」とか、「3人に1人が選んでいます!」といった数字やコメントが出てきます。ボーっとしていると、「えっ、そんなにたくさんのひとが?」と思ってしまいます。しかし、そんなときこそ、驚きの数字がどのように算出されたのかを調べてみたいものです。

私は、「一般的に~」や「みんな使っているよ」という言葉に反応してしまいます。友人と何気ない会話をしているときも、「みんな」と聞くと、「そのみんなって誰? 何人くらいのこと?」と聞いてしまいます。それは相手の友達5人くらいかもしれませんし、仕事仲間10人かもしれません。日本人の1%(1,000万人以上!)ということもあるでしょう。

その「みんな」が示す人数や数量はどれくらいでもかまいません。ただ、3人に1人が選んでいるとき、3人のうち1人なのか、30万人のうち10万人なのかが知りたいのです。たった1人が選んでも33%、10万人が選んでいても33%です。同じ33%でも、選んでいる人数は全然違います。

「一般的に~」も同じです。一般というと何やら世界とか国といった本当に大きな範囲で“当たり前”として共有されているように思ってしまいます。そんなに当たり前のことを知らない自分は、なんて世間知らずなのだろうと感じがちです。

しかし、その「一般」もよくよく聞いてみると、そのひとの友達コミュニティだったり、インターネットで見ている一部のサイトだったり、都道府県や市区町村の範囲だったりします。使っている側に悪気はないでしょうし、私もふとした瞬間に使ってしまう言葉です。それでも、なんだか自分だけが知らないのかなと思うのではなく、どれくらいのひとたちの間で話題になっていることなのか、いわゆる「母数」に興味を持って調べてみると、案外、狭い世界のなかで当たり前であっても、自分を含むほとんどのひとは知りようがないことだったりします。

そういう意味で、曖昧な言葉を真に受けるのではなく、一呼吸置く意味を含めて、調べてみる癖をつけておくのは大切なことだと思います。ただ、無意識に使っていることもありますので、あんまりそのような言葉が出るごとに、相手に問い詰めるようなことはやめましょう。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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