そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

68-2

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考え方
~Glass half empty~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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家族や友達との関係がうまくいっていないことや学校や職場でもやもやしていることを、誰かに愚痴ってみたり、愚痴られたりします。自分のなかでうまく処理できないことを他人に話すことは精神的によいことであり、必要なことです。一方、カウンセラーでもない限りは、聞き手の立場として「そこまでネガティブにならなくても」と思うことがあります。

昨日、都内のカフェにいたのですが、若い女性が二人話をしていました。どうもお財布を落としてしまったらしく、心当たりのありそうなところに電話をかけています。その後、一緒にいた友人に「もうあきらめるしかないかな」「警察に届けるのではなく、持っていってしまったんじゃないか」と話しています。友人も丁寧に耳を傾けていました。

お財布には現金やクレジットカードが入っているかもしれませんし、免許証なども入れている場合があるでしょう。お金を失うことに加えて、クレジットカードや免許証は誰かがよくないことに使ってしまうリスクもありますし、何より一時的に止めたり、再発行するためにいろいろ面倒な手続きが必要になります。

客観的に見ると、カフェで友人に話をしているくらいなら、警察に届けたり、心当たりあるところに探しに行ってみたり、場合によってはクレジットカードなどが誰かに使われないよう対策を講じたりしたほうがいいように思います(既にしていたのかもしれませんが…)。

しかし、彼女がお財布をなくしてしまったことを楽観視せず、悲観的に捉えて友人に伝えることで、自らまたは友人が、「あそこにあるかもしれない」「ここにも電話してみよう」と次々にやるべきことが発見、整理されていっていました。

コップに半分入った水をみて、「半分“しか”水がない(Glass half empty)」という思考は一見ネガティブに見えますが、むしろ、慎重な性格であることや、常に最悪のケースを想定して物事を見ることができる、など肯定的に捉えることもできます。

物事の捉え方や考え方はひとそれぞれですが、“その捉え方”、“その考え方”そのものを肯定的に見、考えることもまた考え方のひとつなのだと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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