そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

72-2

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里親のもとからの大学進学
~周囲の理解と行動~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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児童養護施設や里親から大学などに進学した若者だけではありませんが、生活費と学費をまかないながら学ぶといのは大変なことだと思います。私が出会ったひとたちは奨学金を複数活用していましたが、それらは卒業後に返済が待っているものもありますので、学生生活だけで終わる悩みではないと思います。

ある女性は有意義な学生生活でありながらも、倹約生活をされています。なるべく無駄な支出を抑えるだけではなく、疲れているときも外食で済ませず自炊をするなどしています。いまや2人にひとりの大学生が奨学金を活用していることからも、誰かの自宅に集まって食事をするような楽しみ方は増えてくるかもしれません。

なかなか自らの出自を語りづらいことも多いなか、ある男性は大学の友人に恵まれ、里親出身であることをオープンにして、里親制度をよりよくするための啓蒙活動をしていました。当事者が語ることは勇気がいることですが、周囲の理解と協力があるからこそ前に進めると話をしていました。どのような社会課題も同じですが、解決に際しては、気がついた個人が行動することからしか始まらないのだと思います。

女性の例で伝えたいことは、仲間内で集まるときに、必ずしもお金をかけることだけが楽しさを担保するわけではなく、さまざまな楽しみ方を持つことで、(このケースではお金ですが、それに限らない)既存の楽しみ方ではシンドイと思っているひとも参加しやすくなるということです。

また、男性の例のように、個人的な悩みでも、社会の課題でも、誰かが困っていることを助けられる、そもそも根本的に解決していくためには、それを知った個人が理解に努め、可能な範囲で協力していくことが、その個人や社会がよい状況になることを後押しします。

普段の生活では知り得ないことの方が社会には多くありますが、私自身もできる限り社会的なアンテナを張っていきたいと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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