若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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社会の見え方、見方
~自己責任という社会の見え方~
工藤 啓(くどう・けい)
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先日、朝日新聞で「子育て予算、お荷物?『母になるなら…』掲げる市も」という記事がありました。記事の内容は前向きなもので、みんなで子育てしていくひとを応援していくためには何ができるのか、ということが話されています。
私がとても気になったのが、記事の下にある40代男性の意見です。
「何でもかんでも税金でまかなってもらうことが当たり前のような言い分は甘えとしか言いようがない。貧しければ義務教育が終われば働けばよい。多くの人は我慢するところは我慢して頑張ってきたのである」
もちろん誰でも自分なりの意見を表明する自由があります。その上で、いまは社会的、経済的に厳しい家庭の子どもたちにも十分な機会が多様に提供し、そのために税金を含めてみんなで協力していこうという社会の流れがあります。「子どもの貧困」という言葉もそのひとつです。
しかし、この男性の意見は違います。甘えるのではなく、貧しいのであれば中学卒業で働けばいいし、多くの人(中卒で働く人は多くありません)は我慢して頑張っている、と言っています。繰り返しですが、どのような意見を持つこともその個人の自由です。
こういう「自己責任論」は私たちの社会にとても根強く、「みんなで支えていこう」とは真逆の「自分で頑張ればいい」という意見は意外と少なくないのではないかと思います。確かに、貧しい家庭で生まれても、自らの努力によって社会的にも経済的にも成功されるひとがいます。当たり前のように習い事や塾、大学進学ができる家庭環境ではなく、それでも自らの意志と信念によって未来を切り開いて来られたひとたちを、私は尊敬します。
その一方、誰もが同じような成功や、幸せをつかむことができるわけではなく、一部の成功者がいるのだから、みんなも頑張れるはずというのは少し厳しい考え方に思えます。誰かにとっての当たり前は、必ずしも誰にとっても当たり前ではありません。
参考までにこちらのサイトをご紹介します。「平等」と「公正」の違いが明確にわかります。私は「平等」な社会よりも、「公正」な社会になったらいいな、と思っています。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか