若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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不登校は不幸じゃない
~学校外の居場所を探そう~
工藤 啓(くどう・けい)
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毎年、8月下旬から9月上旬には、子どもたちが自らの命を落とすことが多くなります。そのため、テレビや新聞、ネットでは夏休み明けに学校へ行きたくないのであれば、“行かなくていい”というメッセージが飛び交います。
今年は、全国で「#不登校は不幸じゃない」というキャッチフレーズとともに、全国100か所でイベントが開催されました。
不登校経験者や夏休み後に登校することが不安な学生、その保護者達が集まり、当事者の声を聴きながら、学びの機会を深めたようです。
私も不登校経験のある若者や、学校に行かない選択をした子どもたちとたくさん出会ってきました。その中には、いじめや勉強が苦手、学校という空間にいると体調が悪くなるといったひともいれば、“なんとなく”学校にいけないままになったと理由が明確でないこともあります。
日本にはたくさんの学校があり、希望すれば転校もできます。そして勉強は学校でなければできないというわけではありません。塾でもいいし、自宅でインターネットを使って勉強している子どももたくさんいます。
それでも私たちは何となく「学校は行かないといけない場所」と思い込んでしまっており、学校に行くことができない子どもたちを特別な目で見てしまいがちです。これは大人の問題です。ほとんどの大人は学校に行かない/行けないという環境に身を置いたことがありません。だから、なかなか理解を進めることが難しいのです。
それでも学校以外の場所、それは必ずしも勉強がセットでないところはいくらでもあります。それこそインターネットを含めれば、私たちは世界中のひとたちと話すことができ、新しいことを知り、何かこれまでできなかったことにチャレンジすることができます。
もし、学校に行くこと以外の選択肢を探したいと思ったり、探す必要があるのであれば、学校の代替となる学びの場所だけでなく、自分が行ってみたい場所や、会ってみたいひとがいる場所を探してみてください。地元でも、他の都道府県でも、別の国でもいいです。それを見つけたら、そこに行ってみましょう。そこに行く手段がなければ一緒に考えましょう。それを始めた時点で、すでに学びは始まっているんです。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか