若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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不登校は不幸じゃない
~仲間を増やそう~
工藤 啓(くどう・けい)
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学校がすべてではありません。だから、どうしても学校に行きたくなければ行かなくていいと思っています。ただ、学校に行かないことを選ぼうとするとき、そして選んだ後のことも余裕があれば考えておきたいところです。
残念ながら、まだ「学校は行くべきもの」という考え方が圧倒的に多いことを理解しなければなりません。先生が悪いとか、親に理解がないと考えてしまいがちですが、ほとんどのひとにとって学校は行くべき場所であり、「行かない」という選択肢を持ったことがないはずです。
そのため、私が知り得る限りでは、「なぜ学校に行きたくないのか」を問われることになります。明確な答えを言葉で表現できるひともいますが、学校に行くことが当たり前と考えているひとにとって、「それなら行く必要はない!」と価値観をひっくり返すことは難しいと思います。
先生や親、友人に理解してもらえないと孤独になります。誰もわかってくれない世界でつらい思いを抱えると苦しくなります。そこで重要なのは理解者、仲間の存在です。それは不登校経験者や同じくつらい想いをしているひとばかりではなく、もしかしたらあまり深く考えることなく「行かなくていいと思うよ」と“さらっと”言ってくれるひとでも構いません。
自分の考えを受け止めてくれたり、肯定してくれる存在は、孤独から解放され、いくばくか気持ちが楽になります。いまはLINEやメールで相談できるところもありますので、自分がどこの誰であるのかを明かさなくてもよいものがたくさん出てきています。
また、理解してくれそうなひとの話を聞いたり、実際に出会ってみたいということであれば、さまざまなイベントも開催されています。どんなひとがいるかわからないイベントだと不安だと思いますので、事前にネットで評判を見てみたり、メールや電話で信頼できそうかを確認しましょう。
繰り返しになりますが、学校に行かない選択をするとき、もしかしたら少しだけ孤独な状態になってしまうかもしれません。ひとは孤独になるとネガティブな思考になり、落ち込みやすくなります。そうならないためにも仲間を作る、増やしておくというのはとても大切なことですし、必ず応援者はいますので、ひとりで悩まないようにしてください。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか