そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

133-2

133-2
「こうあるべき」に向き合う
~進学以外の進路選択について~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山崎 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:

私が高校3年生のとき、進路選択に「就職」はそもそも頭にありませんでした。単純に無知だったというしかありません⋯。今の仕事をしていなければ、もしかしたら「高校生の就職活動」のことは一生知らないままだったかもしれません。

書くタイミングがすでに遅いのですが、今回は高卒就職について触れたいと思います。いままで大学進学以外の道を考えたこともない方は、よかったら読んでみてもらえればうれしいです。

まず、なぜこの記事が遅いのかというと、高校生の就職活動の解禁は9月16日と毎年決まっているからです。もう少しいえば、企業への応募は9月5日に始まっています。

大学進学は1月の大学入学共通テスト(旧センター試験)からが本格スタートでしょうか。そう考えるとずいぶん早いですよね。

そして、高校生の就職活動には大学生とまったく異なる制度があります。

「一人一社制」と呼ばれるもので、端的にいうと一人の生徒が応募できる会社を一社に絞りましょうというものです。大学生にそうした制限はなく、並行していくつかの会社に応募しています。景気動向が悪いと何十社と応募している人も良く目にします。

この制度は学校生活にできるだけ影響ができないように配慮されている側面もあります。10月には就職先が決まっていることも多く、この一社目で約6割は進路が決まります。

比較できるようなデータは見つけられませんでしたが、私の大学の友人に「第一志望の会社から内定が出た」という声は決して多くはありません。

これだけ書くと、高校生の就活ってもしかしてイージーなの? と思われるかもしれませんが、別の側面でみるといろいろと疑問も生まれてきます。

例えば、新しい会社やベンチャー企業が求人を出すのは難しいといわれています。生徒に紹介される会社は学校というフィルターを通しているので、いままでも採用のあった会社だったり、これまでの関係性も加味されるからだそうです。

また、業種の偏りも指摘されています。こうした点は「公開求人」という学校を通さない形での制度もありますが、まだまだ充分に活かされていないのが実情です。

「一人一社制」が作られたのは1950年代。もちろん、マイナーチェンジはこれまでも起きてきていますが大枠は変わらず続いてきました。現在、文部科学省と厚生労働省は見直しに向けて動き出しています。和歌山県では、複数応募制に変更することも発表されています。

日本財団が行った、高校生への調査では、「一人一社制」の見直しに賛成が47.3%、反対は4.3%と、一見すると多くの人が賛成しているように見えますが、最大の意見は「わからない」の48.4%なのです。

昨年の高校卒業者のうち、55.4%が大学・短大進学をしています。半数以上が同じ進路を選択していますが、その次に多いのは今回テーマにした就職(17.7%)です。

前回に続き、学生をとりまく「こうあるべき」のひとつのテーマとして就職活動について触れてみました。もちろんこれは先生や生徒、そして会社からも一定の支持を受けているものです。時代に合わせた変化が求められるのは必要なことですが、一方で、今のままであることを望む方にとってはその変化に不安や悩みが生まれることもあるでしょう。

今回は同年代の若者をとりまくひとつの社会の枠を紹介しました。自分の進路に最大限時間を割いて考えたあと、自分が選ぶことのなかった進路にも目を向けると社会が広がるかもしれません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

新着記事 New Articles