若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー
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年齢で区切らない支援の
大切さ
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
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私たちが提供している支援プログラムに、最近、70代の方が利用者として参加されました。育て上げネットは若者支援の団体ですから、参加者の年齢層に大きなギャップは生じています。
そのギャップはほとんどのプログラムで利用対象者を年齢で区切っているためで、こうした年齢の方が参加することは普段はあり得ません。今回参加できたのは、そうした対象年齢に曖昧さのあるプログラムだったためでしょう。
私たちが提供している「夜のユースセンター」は、“ユース”としつつも、現場には見学で来ている他機関の支援者やメディアの方、場合によっては学齢期の子どもも⋯、と一般的に言われる若者(ユース)だけが利用しているものではありません。
今回の70代は極端ですが、10年前には支援プログラムに参加していた40代、50代の方も利用していて、やはり一般に言われるところの「ユース」でない方もおられます。
このプログラムは若者支援の大きな括りでは「居場所支援」と呼ばれるものに該当するものです。厚労省が用意するサポステ(地域若者サポートステーション)はあくまで就職(就労)というゴールを目指していますし、学生向けの学習支援もそれだけではないにしても、卒業年次には進学や就職といった次のステップを決めることが求められます。
居場所支援にはそうした、みんながそろって目指している目標は設定されていません。つながりがあること、つながり続けられる場の提供が主目的であり、「人と関わることに抵抗が薄まった」「働き続ける環境ができた」という効果は個々に現れていくものです。
「夜のユースセンター」が若者中心であることは必要なことであると思いますが、かといって若者でない人が存在できない場になってしまわないようになっていることは重要だと感じています。
実社会には多様な背景を持つ方がおられますし、誰が、どうやって変化や成長を促せるものかわかりません。今回参加された70代の方は、若い人に交じって楽器を演奏して楽しんでおられたのですが、参加者同士がコミュニケーションをとるうえで、そうした多様性はどちらかといえばプラスに働くことのほうが多いように思えました。
それぞれの支援プログラムは目的も求められているものも異なるので、対象年齢が明確であるべきものと、そうでなくても良いものがあるのは間違いありません。ただ、若者支援というポジションがあるからといって、若者だけを対象にする必要はなく豊かな場であることが、若者にとっての居場所として居心地の良いものになるのではと感じています。
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか
認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)