そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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働いていても「孤独」の若者の話と
若者支援の変化

認定特定非営利活動法人 育て上げネット
山﨑 梓(やまざき・あずさ)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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もう11月も後半となり、今年も気づけば1年が終わりそうです。月並みな言葉ですが、年々、時間の経過が加速している気がします。そろそろ1年のまとめに入る時期ですから、今年を振り返ってみると、若者支援ではますます「孤独・孤立」というキーワードを目にする機会が増えました。私たちも「望まない孤立」という言葉をよく使っていると思います。

孤立と聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょう。不登校やひきこもりのような状況でしょうか。誰とも会わない、話すことがないような、社会関係が希薄な状況は間違いなく孤立なのでしょう。

トレンドワードにのぼると、若者のケースを聞き取る機会が増え、実際に若者たちから話を聞いていくと、正社員として週5日働いておられる方から「孤独です」という声を聞きました。

仕事はしているし、会社に不満はない。けれど、毎日夜になると孤独を感じるのだというのです。その方はコロナ禍に新卒入社した方でした。1年目からテレワーク。会社のなかでの関係性を深められないままだそうで、出社できるようになった現在もうっすらとした関係が続いてしまっているのだと。社会関係がある程度築けていても、孤独感を持たれている方がいるのです。

学生から聞いた孤独もありました。ある方は、親が夜遅くまで働いていて、夕飯はいつもひとりで食べているのだそうです。学校は楽しいし、親との関係も悪くない。友だちもいる。でも、夕飯のひとりぼっちの瞬間がたまらなくつらいのだと話してくれました。

10年ほど前に、子どもの貧困という言葉がトレンドになったことがあります。当時、6人に1人の子どもが相対的な貧困状態にあるという発表は大きな話題を呼びました。子どもの貧困という社会課題の難点は「見えにくい課題」であることでした。

日本の場合、貧困国のそれとは違い、定住する家はもちろん、身なりを整えていてスマホは持っている。けれど、塾に通う余裕はない、習い事も無理、部活も辞めざるを得ない⋯。そんなケースが少なからずあったのです。

孤立・孤独の問題も非常に見えにくい悩みであると感じます。みなさんに共通しているのは「孤独感は夜に強まる」ということです。1日を振り返り「ひとりだな⋯」と感じる、代わり映えのない明日が来る、みんなと違うと苦しくなる。そんな感情が強くなりやすいのだと話してくれます。

いま若者支援では、この夜の時間帯に注目が集まっています。私たちも「夜のユースセンター」という名称で夜の時間帯に集まれるフリースペースを開いていますが、行政の支援機関でも夜の時間帯に相談時間を拡大するケースがでてきました。

平日・日中が基本となっている若者支援に変化が起きています。2024年にはどういう姿をしているのか、注目しています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか


認定特定非営利活動法人
育て上げネット 広報担当マネージャー
山﨑 梓
1990年生まれ。2010年から学生ボランティア団体で災害救援活動や地域貢献活動に参加。卒業後に育て上げネットに入職。ユースコーディネーターとして支援に関わりながら調査・研究を担当。現在は広報・寄付担当マネージャー。行政・自治体の若年無業者向けの支援に関わる技術審査員等歴任。共著に『若年無業者白書2014-2015』(バリューブックス)

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