そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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日韓にみるワカモノの実情
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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今年の3月上旬、韓国のソウルにワカモノの実情を勉強しに行ってきました。

日本では「ワーキングプア」など、非正規雇用として働き、生活が非常に不安定な若者をどのように支援していくのかが注目されています。

景気が悪くなると、企業は正社員の数を減らしたいと考え、早期退職制度などを設けて退職者を募ることがあります。しかし、転職市場では年齢が高い人ほど実績や専門性を強く求められる傾向にあり、40歳以上の社員は転職が難しいため、早期退職を勧めてもあまり効果が上がりません。反対に、比較的広く転職チャンスがある若い人から退職希望者が出る現象すら出ています。

退職者をうまく募れなかった企業は、人員削減のため仕方なく新卒者の採用枠を縮小することになります。これまでは毎年10人の新卒者を採用していたところが5人にしたり、3人だったところは0人にしたりするのです。

このようなわけで、よく“若者が雇用の調整弁”となり、正社員の枠がないために、若年層に非正規雇用者が増加すると言われます。

韓国でも似たような状況が見られました。就職格差が大きい韓国ソウルでは、公務員か大企業に就職する以外は、非正規雇用に就くしか選択肢がありません。月額給与はおよそ119万ウォン(約12万円)で、20代の若者のそれは88万ウォン(約9万円)です。人口密度が高く、住居維持費も比例して高いので、88万ウォンでは生活するのも苦しいくらいです。

しかし、公務員か大企業の社員になるためには学歴が非常に重要で、韓国では小学生からずっと受験競争が続いています。そして、ひと握りの「職」を得るために青春時代を勉強に費やしています。日本も同じです。

ただし、受験競争は物心つく以前から始まるので、結局は親の価値観に沿ったものなのかもしれません。一方、受験競争についていけなかった若者は将来や社会に希望を失ってしまうと言います。これもまた、日本と似たような現象です。そんな中、新しい価値観で仕事を創り出す若者が登場してきています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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