そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

22-2

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日韓にみるワカモノの実情
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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既存企業の価値観に従って働く(雇用される)のではなく、社会のさまざまな課題を解決し、人のために、社会のためになることで働き、生きていこうとする若者がいます。最近では、“ソーシャルベンチャー”や“社会起業家”などと呼ばれています。日本でも多くの若者が「よりより社会を目指して自らの力で“働く”を創り出す」ことに取り組んでいます。

韓国でもまた、既存企業に入ることを必ずしも“良し”とせず、社会のためにできることを仕事として創り出す動きが、若者の間で活発化しています。韓国政府もこの若者を中心としたムーブメントを後押しするよう、「社会的企業認定制度」を創設しました。社会のために活動する団体のなかから、雇用を生み出し、しっかりとした組織運営をしている団体に対して、より充実した活動ができるようにさまざまな優遇措置を受けられる認定制度です。

「希望庁」という団体は、10代の若者を中心に起業しており、若者の非正規雇用化を社会課題とし、その解決のために活動しています。デジタル世代の彼らは、IT技術を駆使した商品や映像を通じて、広く社会に若者問題を問いかけています。

「田舎の鳥」という団体もまた、10代と20代の若者が集い、音楽やダンスを通じて社会を明るく、楽しいものにしたいという思いで起業を目指しています。学校や地域で演奏やダンス大会、一般の人を巻き込んだワークショップを通じて、「好きなことを仕事に」しています。

どちらの団体で活動する若者に聞いても、「安定した生活も大切だけれども、いまの自分たちの活動が社会のためとなり、また、自分たちも楽しみながら仕事ができることが大切です」と話していました。

学校を離れた後、いまある社会に入ることとは異なった、自分たちで自分たちの未来を切り開いていく価値観を大切にして生きる。そのような活動が、日本でも韓国でも若者の間から沸き起こっています。社会もまた、少しずつではありますが、その新しい価値観を応援しようという雰囲気になってきている気がしています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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