そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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キーワード
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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企業の新卒採用でも、NPO法人主催のインターンシップ事業でも、公的機関による支援プログラムでも、そのメインターゲットである若者の関心を喚起し、足を運んでもらうことが難しくなっています。景気回復による有効求人倍率の上昇(都市部)や社会参加への意欲など、さまざまな原因分析がなされているようですが、一番大きいのは単純に若者の数が減少していることだと思います。

若者100人のうち3人(3%)が関心を持つとすれば、1,000人であれば30人、100,000人であれば3,000人と、数に正比例して人数は変動します。少子化に伴い、今後は間違いなく若者の数は減少していくわけですから、どのような事業体であれ、若者を惹き付ける“何か”を持ってプロモーションしていかなければなりません。

もちろん、多額の費用を広告費に投入できればそれなりの効果はあるでしょう。しかし、それができない組織が大半です。その際に大切なのは「キーワード」ではないかと思います。広く若者に関わる先駆者は、このキーワードを“作る”のではなく、“実感”から抽出しています。

『若者の挑戦を支援できる社会環境の創造』を目的とする、NPO法人 NEWVERY(ニューベリー)※(旧団体名:コトバノアトリエ) 代表の山本繁氏は、高等教育機関が若者と保護者に対して提示するキーワードを「非中退者率(中退防止率/卒業率)」としています。
※NEWVERY //www.newvery.jp/

就職氷河期が続いたこれまでは、卒業者の内、就職を希望する学生の何%が就職したのか、また、どのような企業から内定を獲得したかなど、就職への不安を払拭するためのキーワードを使ってきました。しかし、採用氷河期と言われるほど、学生が内定を貰い易い環境になったいま、相変わらず従来と同様の提示を続けていても、若者を惹き付ける材料にはなりづらいと分析します。

高等教育機関に入るのも、就職先を確保するのも以前と比べれば数字的に容易になったと思われるいま、未だに高止まりしているのは中途退学です。せっかく入学したが何らかの理由で辞めてしまう学生が多い。そのようなリスクに対して何を提供するのか。その実績はどうなのか。それらを端的なキーワードとして示すことで、新たな教育環境に一歩踏み出す若者に安心感を与えることが重要だと言っています。

私も、新しい環境に対する漠然とした不安が、いまの若者に比較的共通するテーマだと実感しています。山本氏の話は非常に共感できるものです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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