そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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キーワード
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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「公を私がもっと豊かにする時代」をミッションとする株式会社エンパブリック( //empublic.jp )代表取締役の広石拓司氏は、若者へのキーワードを「自己成長」と分析します。広石氏は社会企業家の育成、学生と企業のインターンシップ事業などを手がけるなかで、若者が求めることが変化してきたと語ります。非常に印象的だったのは、「少し前までは、“インターンシップ”という言葉に若者が惹かれて来たが、いまはそれをキーワードにすると逆に難しい」ということです。

「社会をよくするために」「自分の街を盛り上げるために」というキーワードだけでも十分インパクトがあった時代は過去のものとなり、いまはその行動を通じて“自分が成長した実感”を得られることが重要視されています。お話を伺ったときには、まさに「目からうろこ」で、私と同じように感じられる人は多いのではないでしょうか。

キーワードで付け加えるならば、社会がセンセーショナルに取り上げる若者像を示す言葉も変化しています。特に社会から離れざるを得ない状況にある若者は、自ら学校に行かない「登校拒否」から始まり、学校に行けない「不登校児童」、自宅から出ることができない「ひきこもり」、働くことに希望が持てなくなった「ニート」、最近では、「ネットカフェ難民」、「軽度発達障害」なども広くキーワードとして活用されるようになりました。

若者の関心を惹き付けるにせよ、社会構造の狭間に陥ってしまった若者にスポットを当てるにせよ、もちろん、商品を売ることや、サービスを提供することも含め、「キーワード化」は非常に重要な位置を持っています。時代や活用ツールが変化すれば、若者が興味を持つキーワードも変化します。逆に言えば、事業内容や提供されるサービスに変化がさほどなくとも、その「見せ方」や「切り口」を時代のニーズに合わせることによって、再び注目を集めることが可能となります。

よくよく関心を持って見回してみると、若者が集う場、活用するサービス、参加するプログラム、積極的に参加する講座などは、とても吟味され、ニーズを的確に捉えたキーワードが散りばめられています。いまどきの若者を知るためには、使われているキーワードに着目していくのもひとつの手立てなのではないでしょうか。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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