そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

26-1

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インターンシップへの期待
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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私の事務所には毎年、数多くの学生がインターンシップの機会を求めて来ます。私が日本で大学に通っていたころは、給料が発生しないのに「働く」などは“ありえない”と考えていたのですが、アメリカの大学に行けば誰もがインターンシップに取り組んでいました。何のために貴重な時間をインターンシップに使うのかと尋ねると、それは「経験」であったり、「学び」であったりと、給料でない貴重な「何か」を得るための主体的な行動であったわけです。

この「何か」に対する「主体性」はとても大切です。なぜなら、受け入れ側としても、目の前の学生が何をインターンシップに求めているのかが明確になるからです。新聞記者をめざしていたH君は、メディアを通じた情報発信が社会に大きな影響を与えると考えていました。そして、「工藤さんのところは情報発信力が強くないので、そこを強化しましょう」と提案してきたのです。

私が「確かにそうですね。では、お願いします」と伝えた後の、彼の行動はとても速いものでした。学校で学んだ知識を体現すべく、新聞社や記者クラブを回り、インターネットを駆使しながら、次々と「情報発信」機能を作り上げていくわけです。既に実行すべき計画を温めていたようです。

夜遅くまで活動するH君に、「何でそんなにがんばるの?」と尋ねると、「自分のやってみたかったことに“権限"と“責任"を持って取り組むことができ、成功体験と失敗体験ができる。こんなに面白いことはない。お金で買えない経験です」とパソコンに向かいながら話します。アルバイトの時間を減らしているためか、カップラーメンをすすりながら。

そんな彼も某大手新聞社に内定をもらい、いまは記者の卵としてそこでインターンシップをしています。新聞社に対する情報発信機能を作り上げ、いまでは発信された情報を受け取る立場となっています。新たな“権限”と“責任”のもと、主体的に行動をしていることと思います。相変わらず、カップラーメンをすすりながら。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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