そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

26-2

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インターンシップへの期待
~後編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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インターンシップを通じて「自分を知る」ことに期待を持つ学生もいます。就職活動の本格的始動を目前に控え、どのような職業、どのような企業を選択すべきか、非常に悩むところなのだと思います。終身雇用制度の崩壊と叫ばれながらも、転職によるキャリアアップがきっちりと構築されている社会ではないので、最初の就職は一大イベントであるのは当然のことかもしれません。

内定を複数獲得した学生Sさんは「本当にこれでよいのか」と悩んだ末に、“就職浪人”を選びました。利益の最大化を目指す企業での活動と自らの想いである「広く社会の役に立つ」ことが結びつかなかったといいます。たまたまインターネットで私のインタビュー記事を見て、すぐに電話をくれたのがインターンシップのきっかけでした。

Sさんがインターンシップに期待するものは「広く社会の役に立つ」という漠然としたものだったため、最初は“広く社会とかかわってみる”ことから始めました。近隣農家への援農、独居老人宅に出向いての布団乾燥など、とにかく地域社会を知るために数ヶ月を費やしました。次に、私と一緒に中央省庁の委員会に出席してみたり、行政関係者とのミーティングに同席したりと、幅広く社会とかかわってみたのです。

しばらくすると、Sさんは「社会のために活動しているひとをバックアップする仕組みを作る必要があるのではないか」という問題意識を持ち始めました。次第に自らの方向性が見え始めてきたのでしょう。企業人としての利益の最大化よりも、社会利益の最大化を考えるようになりました。

いま、Sさんは某省庁で「社会利益の最大化」と「社会のために活動しているひとを支える」ために奮闘しています。時折、多忙なスケジュールの合間を縫って、立川の事務所に足を運んでくれます。1年足らずのインターンシップで「自分を知る」ことができたのかどうかは聞いていませんが、少なくとも、「広く社会の役に立つ」というSさんの足は、目標に向けて歩みを進めています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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