そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

27-1

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学校を辞めるということ
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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高校を途中で辞めてしまうひとが毎年数万人います。政府の統計でも、一時は10万人を越えていたこともありましたが、いまはその数も徐々に減ってきています。中退者数が8万人を切った年もありましたが、これは高校を辞めたひとが少なくなったと考えていいのでしょうか? 数字の上では確かに人数は減っていますが、少子化により子どもの数も減っているのですから、実は高校を中退したひとの割合は変わっていないのかもしれません。

先日、NPOを運営する友人から、高校の中退だけではなく、専門学校や短大、大学を途中で辞めてしまうひともかなり多くいると聞きました。その数を全国で合計すると毎年12万人くらいに上るというのです。

私もいまから10年ほど前に都内の大学を中途退学しました。大学は2年生までしか行っていません。もっと言えば、その2年間でも大学の授業にあまり出てもいませんでした。これだけだと、私は何のために大学に入学したのか? と疑問に思われるかもしれませんが、これでも高校卒業時にはしっかりと大学を卒業して就職しようと考えていたのです。しかし、学生時代に出会った多くのひとびとから影響を受け、やがて「普通に大学を出て社会人になるのだ」という考えは変化していきました。

日本で大学を卒業する以上に大切なものを見つけたのが、大学2年生の夏でした。アメリカに旅行中に出会った台湾人の友人と一緒に過ごすことのほうが、自分の人生にとって重要であると感じたのです。大学を辞めるための手続きをしようと担当教授に話をしにいくと、「辞める必要はないのではないか。休学ということにしてみてはどうだろうか」と言われました。しかし、自分が世界で感じたことや、いますぐにでも渡米したい思いを先生に説明すると、最後は「がんばれよ」と応援してくださったのはいまでも覚えています。

私は頭から学校を辞めることが悪いとは思っていません。それが次の目標に向けての前向きなものであるならば、あとは自分の決意次第でしょう。しかし、いまの日本において学校を“なんとなく”辞めるということは、どのような機会の損失を被ることがあるのかはしっかりと認識しなければなりません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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